鎌倉駅周辺、相次ぐホテル開業 「日帰り観光」から「泊まる街」へ

芳垣文子
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 【神奈川】JR鎌倉駅周辺に新しいホテルの開業が相次いでいる。鎌倉は「日帰り観光」が主流だったが、宿泊のニーズが少しずつ高まっているという。コロナの影響による落ち込みから徐々に回復の兆しが見えるなか、各ホテルは宿泊需要の掘り起こしに工夫を凝らしている。

 コロナ禍前は年間2千万人近い観光客が訪れた鎌倉。このうち宿泊客は30万人程度と「日帰り観光」が主流だ。そんな鎌倉でここ1~2年、新しいホテルの開業が相次いでいる。

 先陣を切ったのが「ホテルメトロポリタン鎌倉」。2020年4月、JR鎌倉駅東口徒歩2分の場所にオープンした。若宮大路に面した抜群の立地。全138室、地上5階地下1階の建物中庭にはモミジやカエデなどが植えられ、落ち着いた雰囲気を醸し出す。

 東京五輪パラリンピックの外国人客を見込んで開業したが、開業とコロナの感染拡大が重なり、当初はキャンセルが相次いだ。

 今年は春の大型連休から予約が一気に増え、週末もほぼ満室が続く。フロントマネジャーの渡辺智彦さんは「ようやく軌道に乗ってきました」と胸をなでおろす。首都圏を始め遠方の客も少しずつ増えており、近隣レストランの夕食と組み合わせた宿泊プランやオリジナル散歩マップなども用意している。

 「トーセイホテルココネ鎌倉」は鎌倉駅西口徒歩4分に21年10月に開業。全73室、大浴場もある。運営する「トーセイ・ホテル・マネジメント」(東京)は上野や浅草、神田など都心にホテルを展開、コロナ禍前は外国人客を中心に好調だったという。

 鎌倉もインバウンド需要を見込んで計画。計画段階では競合する宿泊施設は少なく、十分勝算があると踏んだ。コロナ禍もワクチン接種などが進めばいずれ需要は回復すると予測し、予定通りに開業した。

 女性客をターゲットに、全客室にヘアアイロンやフェーススチーマーなど美容家電を置き、スキンケアセットをプレゼント。スタッフが夜食事ができる飲食店を調べた地図も配っている。

 ホテル本部長の檜山元一さんは「日帰り観光が主流だったのは、宿泊施設が少なかったからとも言える。気軽に泊まれる宿ができれば、潜在的な需要は十分見込めます」。

 今年4月には鎌倉駅西口徒歩3分に36室の「鎌倉青山(せいざん)」がオープン。1階の広々としたレストランが特徴で、うどんなど手軽なメニューが楽しめる。担当者は「ホテルの中のレストランというより、いつものレストランで宿泊もできると考えていただければ。『地元』をキーワードに、近隣の方たちに親しんでいただけるホテルをめざしたい」と話す。

 レストランでは地元客を意識して総菜も販売。犬の散歩の途中に訪れる近所の住民がテラス席でお茶をする姿も見られるという。

 ほかにも、鎌倉駅周辺には「カマクラホテル」(16室)が20年11月に開業。今月16日には京急グループの「プラットホステルケイキュウ カマクラウェーブ」(35室)も開業予定だ。

 市は第3期観光基本計画に「『泊まる観光』の推進」を掲げる。鎌倉市観光協会専務理事の大津定博さんは「宿泊施設の増加は観光客の選択肢が増え、宿泊による消費額の増加にもつながる。夜や朝早い鎌倉の魅力も発信でき、大いに期待したい」と話す。(芳垣文子)

由比ケ浜駅の近くにも

 江ノ電由比ケ浜駅から約3分の場所に今年5月、「バードホテル ガーデンハウス」が開業した。IT企業の社員寮を改装し、客室は5部屋。築40年以上経つ建物は2階建てでこぢんまりしているが、敷地面積は約1031平方メートルあり、テラス席は約100席取れる。レストランが併設されていて結婚式場としても利用できる。

 ホテルを運営する「グリーニング」(東京)CEOの関口正人さんはコロナによって人々のライフスタイルが変化したことに注目。「鎌倉も1日で帰るより少しのんびりゆったり過ごしたいという人たちが増えていると感じる」と話す。宿泊して鎌倉のまちや自然、食事を楽しむニーズが十分あると見込む。

 ホテルでは週末は首都圏中心の観光客、平日は半径3~5キロ範囲の地域住民を意識しながら、食事などの情報を発信していくという。

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