出入国が顔パスに?―航空局など空港イノベーションめざす
こうした進化の方向性に対して現実はどうか、また今後求められることは何か。現状については成田国際空港と関西国際空港が取組状況を説明した。成田では、CUSSなどの導入や案内表示の工夫、旅客の動線の管理、保安検査場のスマート化などにより、手続きの所要時間を出発は10分以内、到着も30分以内に収めることなどを戦略目標として掲げている。
CUSSについては関空でも力を入れているところで、現状では48台を設置しているが18年3月までに倍の96台へと増やす準備をしている。ただし、利用率が10%以下に留まっていることが課題といい、成田では同じ課題に対して導線上の望ましいと思われる場所に再配置する試みをしているが、関空ではさらに自ら動き回る自走式のCUSS「KATE」も導入した。
SITAによる自走式自動手荷物預け機「Leo」の紹介動画
一方、保安検査のスマート化にとって鍵のひとつは「スマートレーン」と呼ばれる新型の検査レーン。機内持ち込み荷物をトレーに載せてX線検査をおこなう台のことだが、何がスマートかというと、例えば従来はある旅客が複数のトレーを流す場合、別の旅客の荷物を間にはさむことはできなかったが、関空が日本で初めて導入したスマートレーンでは4人まで同時に使用可能。また、使用されたトレーも自動で入り口側へと運ばれる。
関空ではこれにより処理能力が2倍近くまで向上したといい、未導入の第1ターミナルにも18年9月末までに16レーンを設置する計画。成田も18年度から19年度にかけて導入を予定しているという。航空局でも、スマートレーンにかぎらずボディースキャナーなどの機器導入に対して費用の補助をおこなう計画だ。また行政では、出入国審査を担う法務省も昨年10月に顔認証による自動化ゲートを羽田空港で稼働。今後は他空港でも導入を進めていくという。
スマートレーン イメージ図。新関西国際空港の報道発表資料より転載
このように、各タッチポイントでの改善は進んでいるところで、今後は「One ID」のようにそれぞれがシームレスに繋がる姿が理想となっていく。そしてそのために重要なのが関係者同士の連携だが、関わるプレーヤーは航空局や地方自治体、CIQに関わる官公庁、空港ビル会社、航空会社、二次交通と多岐にわたり、登壇したプレゼンターも異口同音に関係者間の緊密な協力が成功の鍵と訴えた。
先述の通り海外ではすでに取り組みが先行しており、ちょうど先月には世界経済フォーラムでバイオメトリクス認証やブロックチェーン技術を用いたOne ID的な仕組みの「Known Traveller Digital Identity」が取り上げられ、カナダとオランダがそのテストを実施するとも発表されたところで、日本もこうした流れについていくことが必要になる。
今回が初開催となった日本の航空イノベーション推進官民連絡会議は今後も年1回を目処として開催し、必要に応じて分科会やワーキンググループ(WG)などで議論を深める方針。特に、地方空港には東名阪と比較してターミナルビルが狭いなど特有の課題も多いことから、まずは仙台と那覇についてWGを設置し、課題や解決策を共有し、FAST TRAVEL推進の目標とそのための計画を策定していく方針だ。
※会合では、ボーディングブリッジの装着やプッシュバックなどグランドハンドリング関連のイノベーションについても発表があったが、本稿では旅行者に直接関わる分野を取り上げた |