講師:全国国際教育研究協議会・常務理事「修学旅行」担当責任者
(文京学院大学女子高等学校教諭)
入江祥史氏
少子化の進行により、全国的に生徒数が減少する中で学校の思いはひとつ、「特色ある学校づくり」に尽きる。公立・私立、男子校・女子高・共学の別を問わず、
各校とも自分の学校の「特色売り」を求めており、それがなければ生徒募集はおぼつかないのが現状だ。
そういう事情のもと、国際理解教育にも関連して海外修学旅行は重要である。教育旅行成功のポイントは3つある。一つは学校交流。教育旅行には修学旅行、留学、
研修旅行などがあるが、いずれの旅行においても、事前学習を含めた学校交流の要素は重要だ。
二つ目はホームステイ、ホームビジット。ホームステイ体験は、生徒たちにとっても感動的な体験となる。そして三つ目は体験学習。すでに国内修学旅行では、
体験学習なしの修学旅行は考えられなくなっている。海外修学旅行でも同様の傾向だ。また各国政府観光局やJAICA、各種NPO・NGOなどが教育旅行の体験学習に協力してくれるので、
大いに活用して海外修学旅行に体験学習を取り込むべきだ。
ひとくちに体験学習といっても、施設見学や農業体験、ボランティア体験、環境学習体験、自然体験、文化的体験、スポーツ交流など各種ある。工業高校や総合高校であれば、
現地の日系企業に依頼して、施設見学のプログラムを組むことも可能で、積極的に協力してくれる企業も少なくない。航空会社の協力を得ることもでき、さまざまなプランの可能性がある。
環境学習体験をするためのエコツーリズムへの参加は、そのままでは日程的な問題や安全面の課題があり、教育旅行に取り込めないが、危機管理を含めて、
どのように教育旅行に取り込んでいくかが課題となっている。文化的体験は、歴史学習、文化学習、平和教育などの効果が期待できる。
学校側としては、旅行会社が提案する体験プランをそのまま実施するようでは駄目。自ら体験プランのアイデアを考え、特色ある教育旅行を作り上げていかねばならない。
そうでなくては生徒は集まらない。受験生も保護者も、学校をよく見ている。制服が気に入って学校を選ぶ生徒もいれば、その学校の教育旅行がよくて志望する生徒もいる。
公立小学校や中学校でも生徒が学校選択制になりつつある時代に、生徒が集まらねば学校は統合されてしまう。生徒募集は日本中の学校が取り組んでいる問題だ。その意味でも教育旅行は重要なのである。
* 海外修学旅行に係わるご質問、ご意見などありましたら、入江先生の方へご連絡ください(文京学院大学女子高等学校:電話03−3946−5301)
マレーシア政府観光局:徳永誠マーケティングマネージャー |
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平成17年度には90校・1万3289名が海外修学旅行でマレーシアを訪れている。今年度も神奈川県や石川県の高校が新たにマレーシアの海外修学旅行を実施する計画である。
各校がマレーシアを選ぶ理由は(1)マレーシアが多民族の共存を目指す国である(2)英語でのコミュニケーションが可能である(3)熱帯雨林など環境学習の素材と舞台に恵まれている
(4)ルックイースト政策が行われてきたこともあり人々が親日的であるD日本の生徒にとって、マレーシアが興味と関心の薄い国であること――などが挙げられる。
5番目の「興味と関心が薄い国」だからマレーシアを選ぶという理由は説明が必要だ。日本には欧米崇拝・アジア軽視の歴史があり、近くの隣国を知らない面がある。
だからこそアジアを体験することは意味がある。修学旅行に参加する生徒の中には海外旅行初体験という生徒もいる。
彼らにとってアジアは強烈な体験として印象付けられるだろうし、世界観にも影響を与え得るものだ。
シンガポールは数年前までは学校交流ができなかったが、現在では教育サービス局が設けられ、学校交流も可能になった。ホームステイについてはNPO経由で実現できる。
学校交流については、ツーリズムクラブという仕組みがある。シンガポールの生徒たちがツーリズムクラブの会員に登録し、ツーリズムアンバサダーという役割を果たす。
アンバサダーは、海外からやって来た教育旅行の生徒たちに付き添ってシンガポールの案内役を務める。
ホームステイに関しては、04年8月にホームステイ・プログラムを提供する非営利団体「AMCIS(あむしス)」が設立され、ホストファミリーの年齢や家族構成、経済状態や住環境、
部屋の設備などを審査して登録するようになっているため、一定のレベルのホームステイ先を安定的に提供できる。現在、一度に400名程度まで受け入れられる状態だ。
タイ国政府観光庁:藤村喜章マーケティングマネージャー |
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タイへの海外修学旅行は、東北や北海道の学校を中心に実施されており、04年には24校ほどがタイを訪れている。
これら24校がタイを選んだ理由を分析すると、(1)歴史的なつながりや仏教国同士の親近感、両国皇室の親密な交流より親しみが感じられる(2)治安と政治情勢が安定している
(3)姉妹校関係に基づく学校交流C日/タイ間の航空便が豊富で費用も比較的安いD学習素材が豊富でプログラムを作りやすいことなどが挙げられる。
注目の素材を挙げるなら、タイ東北部のナコンラチャシマである。バンコクから車で4時間のこの場所には、アジア有数の遺跡であるピマイ遺跡がある。
現地高校生が英語で遺跡をガイドしてくれる制度もあり、学校交流もできる。
さらに自然が豊な地域で、世界自然遺産の国立公園内ではネイチャートレッキングを体験でき、運がよければトラに遭遇することもある。
チェルシー・プレミアム・アウトレット:ロン・スタンバーグ日本代表 |
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チェルシー・プレミアム・アウトレットは、全米に35ヵ所以上のアウトレットを展開しており、アウトレットでは600以上の人気ブランドを25%〜60%割引で販売している。
ここでは旅行のお土産を購入するだけでなく、海外でのショッピングを通じてさまざまな体験ができる。海外の通貨を使用することで、両替えや為替相場について体験的に学ぶことができ、物品の購入時には英語の実用的なコミュニケーション力を鍛えられる。
また自分の小遣いを有効に使う工夫を通じて経済について考えるきっかけも得られる。チェルシー・プレミアム・アウトレットは観光施設というより、一般のアメリカ人がショッピングに訪れる場所であり、日米の生活や発想の違いなどを、品揃えや店のディスプレイなどを通じて体感できる。
各アウトレットは、一定の安全が確保されており、生徒たちが安心して自由行動でき、引率者も管理しやすい。飲食施設や各種案内表示、インフォメーションセンター、コインロッカー、ATMなど設備が整っているのも強みである。
オーランド観光局:田中賀世子マーケティングマネージャー |
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オーランドはウォルト・ディズニー・ワールドをはじめ、ユニバーサル・オーランド・リゾート、シーワールドなど人気のテーマパークが30分圏内に集中しており、
少し離れるがケネディ・スペースセンターもある。これらのテーマパークでは、単にアトラクションを楽しめるだけでなく、教育旅行向けの各種プログラムが用意されている。
ウォルト・ディズニー・ワールドは、ディズニーワールド内のホテルに宿泊してディズニーオリジナルのさまざまなプログラムを学習できる「ディズニー・インスティテュート」がある。
学習プログラムはディズニーのサービスや人材マネジメント、リーダーシップ、ロイヤリティ、組織、ヘルスケアサポートなどについての内容となっている。
ユニバーサル・オーランド・リゾートではスペシャルFXやアトラクションの舞台裏を見学するプログラムなどが用意されている。ケネディ・スペース・センターでは、
専用バスで発射台や展望台、ロケット組み立てビルなどを見学するプログラムがあり、日本語イヤホンガイドの用意もある。
さらに宇宙飛行士のトレーニングを疑似体験できる泊りがけのプログラム「キャンプKSC」などもある。シーワールド・オーランドでは海洋生物との触れ合いを中心とした各種学習プログラムがある。
ハワイは年間150万人前後の日本人が訪れており、その50%がリピーターとなっている。海外修学旅行に参加する生徒の保護者の中にもハワイ旅行経験者は数多いと考えられ、
子供を送り出す上での安心感があるといえる。
ハワイはリゾートであるだけでなく、文化面でも自然環境の面でも教育旅行の体験素材が豊富である。たとえばアロハシャツは日系人が持ち込んだ浴衣の生地で作られたのが始まりであり、
ここからハワイと日本の歴史を学んでいくこともできる。
ホノルル美術館は世界の美術品をアジア、中近東などの地域に分けて展示しており、コレクションは世界レベル。日本人が好むモネなど印象派の作品もコレクションされている。
自然素材としては、世界遺産にも登録されている火山国立公園では溶岩が流れる様子も観察できる。
またハワイには世界中の13の気候分類のうち11の気候が存在するとされ、ハイビスカスだけでも300種類という動植物の豊富さも特徴である。
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