VIVA STUDENT
海外教育旅行メールマガジン 5月号
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マレーシア政府観光局 海外教育旅行を成功させるための提案

ケーススタディ<芝浦工業大学柏中学高等学校の場合>

 中高一貫教育校として高い評価を得る芝浦工業大学柏中学高等学校。中学校開設以来、マレーシアへの研修旅行を行ない、今年で5回目を迎える。教員たちのさまざまな試みにより、 継続性のある交流と学習視野の拡充といった理想的な実績を築き上げてきた。「環境」「情報」「国際性」など21世紀に欠かせないキーワードを軸とする、同校の研修旅行の内容と取り組みを紹介したい。


事前に交流校とEメール交換、大切なのは互いの文化の正しい理解
 同校では現在、中学3年6月でのマレーシア研修旅行が定例カリキュラムとして定着している。
 「計画段階より、インターネットを活用した国際交流と海外研修旅行を目指していましたから、事前にマレーシアの中学生とのEメール交換を行なったり、 また1年生より国内でのグリーンスクールやフィールドワークを通じて環境について学んでいます」と話すのは、佐藤正行校長。
 例えば「ワールドデー」と題された総合学習の時間では1年次の中心テーマを「環境」とし、 福島県にある芝浦工大のセミナーハウスを利用して森林の伐採体験など環境について学ぶグリーンスクールを実施、 マレーシアでの熱帯雨林見学へとつなげている。
 2年次に上がると中心テーマを「国際」とし、訪問先のプトラジャヤ第一中学校の生徒とEメールやテレビ電話などを通して交流を深めている。
「2年生になるとすぐに自己紹介カードを英語で作成し、それをマレーシアに行く3年生に届けてもらいます。その後は、直接相手の生徒との1対1のEメール交換が始まります」
 1年次より一人1台のノートパソコンを使った授業を進めている同校ではパソコンは文房具代わりであり、また外部の世界と出会う情報ツールでもある。
「コンピューター教育が目的なのではなく、パソコンはあくまでも便利な道具のひとつ。特に海外とのやりとりはインターネットが大変有効です。 マレーシアの交流校とのEメール交換は国際交流であると同時に情報教育の一環であり、また英語でのコミュニケーション力を実際に活かす機会でもあるのです」
 さらに、英語の授業では2年次に「Rainforests」、3年次に「Pollution」といった洋書教材を用いて英語で環境問題について学ぶが、 これもマレーシアの研修旅行に結びつく総合的な学習のひとつとなっている。
「一番大切なのは、インターネットを通じてできた友だちに実際に会うことです。その時に、 意思疎通が図れるまでの語学力と相手の文化への正しい理解を身につけていることが必要なのです」と佐藤校長は力説する。

関心の薄い国こそ異文化理解の意義がある
 平成11年に文部省が中高一貫教育を制度化した年、同校の中学部は開設された。その準備段階から海外修学旅行を発案し、 実現させてきた長谷川成樹副校長は訪問地をマレーシアに決定したいきさつをこう語る。
「まずは、多民族・多文化の共存を実現させている国であることから、 国際理解教育に格好な目的地であると考えました。イスラム教のモスクをはじめ仏教や道教の寺院、さらには極彩色のヒンズー寺院まで、 多様な文化の並存を視覚的に捉えることができるのも貴重な体験です。また、それぞれの民族の言語を話しながらも英語によるコミュニケーションが可能であることも大きな理由でした。 さらには、熱帯雨林を通して地球規模での自然環境について学ぶことができます。国際・環境・情報を教育の大きな柱とする本校にとって、 マレーシアへの研修旅行はそれまでの学習成果を実践に移す好機となります」
 さらに長谷川副校長はこう続ける。
「芝浦工大がマレーシアからの留学生の受け入れを通じて、深く関わっている国であることも大きかったと思います」
 同校では総合学習の時間に「マレーシアタイム」を設け、そこで同大の留学生を講師に招き、マレーシアの文化、生活習慣、宗教について学習する。レクチャーだけではなく、 クイズ形式でマレーシアに関する質問を投げかけ、得点の高い生徒には商品としてマレーシアの土産品が贈られるといったユニークな構成もとられている。
「正直、日本の中学生にとってマレーシアは関心の薄い国かもしれません。それだけに、異文化を理解する上で一層意義深いと考えています」

交流で学んださまざまなこと
 同校のマレーシア研修旅行は4泊6日の日程で行なわれ、うち一日半を学校交流に当てている。生徒達の感想文でも、学校交流の記述が圧倒的に多い。
――マレーシアの生徒は、私たちを、国や人種の枠にはめずに、一人一人を同じ人間として優しく向き合ってくれたので、とても嬉しかった。きっとマレーシアの子は、さまざまな民族がいる中で、 人間関係を良好にするにはどうしたらいいかということを自分なりにいつも考えているのだと思います。 ――研修旅行の最初の2日間は、ほとんど友だち任せにして英語でしゃべることを避けていました。でも、プトラジャヤの中学に行って変わりました。 何とか相手に伝えようと一生懸命にやっているうちに、普通に英語でしゃべるようになっていました。それまでは、 一生懸命にやることをバカバカしいと思い避けていました。でもマレーシアで一生懸命にやることを楽しんでいました。なぁんだ、あきらめなくて良かった。
 この文集のクラスの担任を受け持ち、プトラジャヤ第一中学校との交流の窓口を担った麻生裕二教諭に具体的な交流の方法を伺った。 「まず”Tシャツ・デザイン・コンペティション“というのを企画しました。両校の生徒が班ごとにTシャツのデザインを考案し、それをウェブ上で発表して、 両校の生徒や教員たちの投票によって1位を決めます。その発表は我々が先方の学校を訪れるまで伏せられ、訪問時にそのデザインがプリントされたTシャツを見て、 初めてわかるという仕組みです。もちろん両校の生徒ともそのTシャツを着て交流します」
 交流初日は、歓迎会や学校紹介のプレゼンテーションの後、プトラジャヤ市内にある農業公園でヤシの実を使ったボウリングやマレーの遊技などをして親交を深め、 そして翌日、再び学校を訪れて互いに合唱や民族舞踊などを披露する。 「2日目は、初日と比べて生徒同士の距離がグンと近くなります。別れの時は泣きながら友情を契り合う子も多く、 帰国後もEメールで親交を温めているようです」 また、今年2度目の引率に赴く英語科の小暮真弓教諭はこう語る。「海外研修から帰ってくると、 どの生徒も一様に”もっと英語が話せるようになりたい“と痛感します。高校生になると英語は受験科目になってしまうので、 中学の間に生きた英会話を身につけることは非常に有用です。生徒だけでなく教員にとっても、マレーシアとの交流は気付かされることがたくさんあるのです」


資料:芝浦工業大学柏中学高等学校、マレーシア修学旅行日程
6日目 7:30 学校集合
8:00 出発
10:00 成田空港着
12:25 JAL723便にてクアラルンプールへ
昼食機内
18:35 クアラルンプール(KL)着 ホテルにて夕食
2日目 午前 クアラルンプール市内見学
ムルデカ広場、王宮など(各クラス別コース行動)
午後 昼食(KLCCにて班別行動)
KLタワー、国立博物館んど(各クラス別コース行動)
ホテルにて夕食
3日目 午前 森林研究所(熱帯雨林を通しての環境学習)
2クラス単位で行動
午後 昼食(中華料理) 国立ゴム研究所(体験学習)
2クラス単位で行動、バトゥー洞窟見学
ホテルにて夕食
4日目 学校交流初日
午前 プトラジャヤ第一中学校訪問
両校学校紹介プレゼンテーション
交流班で名刺・プレゼント交換など
昼食(学校食堂)
午後 首相官邸訪問、新都市プトラジャヤ見学、農業公園散策
夕食(マレー料理レストラン)
5日目 学校交流2日目
午前 プトラジャヤ第一中学校訪問
日本とマレーシアの文化・遊びなどの交流
昼食(学校食堂)
午後 両校発表(民族舞踊、音楽演奏、合唱など)、閉会式
マインズショッピングモール班別行動
夕食(KLIA国際空港近くのホテルにて)
深夜 JAL724便にて帰国
6日目 6:35 成田着
7:15 空港にて解散


*詳細はマレーシア政府観光局のホームページをご覧下さい。
www.tourismmalaysia.or.jp