【クレジットカード不正利用を知る】3-Dセキュアだけでは防げない! 不正検知システムの役割-Akuru代表近藤修氏、取締役栗田和明氏

 クレジットカードの不正利用について、先月トラベルビジョンではUCカードの山口哲史氏に取材し、アクワイアラの立場からの見解を聞いた。インタビューでは対策のひとつとして不正検知システムの導入が挙げられたが、なぜ3-Dセキュアによる本人認証だけではなく不正検知システムが必要なのか、疑問に感じた読者もいたのではないだろうか。旅行業に特化した不正検知システムを提供するAkuruの代表取締役社長、近藤修氏と同取締役・プロダクトマネージャーの栗田和明氏に、不正検知システムの役割について詳しく聞いた。

-まずは貴社の事業についてお聞かせください
Akuru代表取締役社長の近藤修氏

近藤修氏(以下敬称略) 当社は主要な決済代行会社、カード会社、ECベンダーと提携して、カード加盟店に向け、第三者によるカードの不正利用、いわゆるチャージバックに対するソリューションを提供しています。

 不正利用の被害はこの4年から5年の間にあらゆる業界で増加しています。旅行関係で見ると、最近では2017年3月頃、航空券や宿泊の予約が集中的に狙われ、大手OTAなどから相談を受けました。当社では創業以来「チャージバック保証サービス」を提供していたのですが、旅行関係での被害額は億単位となるケースも多く、そこまでの保証は難しい状況でした。加えて当時は他社の不正検知システムなども紹介していたもののなかなか導入に至らなかったという背景もあり、2018年12月、旅行系の加盟店に向けて不正検知・認証システム「ASUKA」をリリースしました。

-旅行業や宿泊業における不正利用の推移をお聞かせください

栗田和明氏(以下敬称略) やはりインバウンド増加の影響は大きかったと思います。例えば中国では、旅行会社を装った闇ブローカーがSNSなどで募集をかけてパッケージツアーのようなものを組み、裏では第三者のカードを使って航空券や宿泊施設を予約したり観光施設のチケットを購入するといった例もありました。

 旅行需要が減退したことを受け、2020年は旅行関係での不正利用はほぼなくなりました。ただし昨年の年末には、日本の海外宿泊のサイトが集中的に狙われるという被害が発生しています。この事例は元を辿ると海外のメタサーチからの流入でしたが、海外在住の方が年末年始に帰国するという需要が発生し、そのカード決済の部分で日本のサイトが悪用されてしまった可能性があると思われます。

-具体的にはどのような事例があったのでしょうか

栗田 カードの不正利用では「転売して換金する」という手口が最も多く、換金できるものであればどこでも不正は発生します。UCカードさんのインタビューでは宿泊の事例が挙がりましたが、LCCの払い戻し可能な航空券を不正購入して窓口で払い戻しを受けるという例もありました。また、パッケージツアーがフリマアプリのようなC to Cのプラットフォームで転売されていたケースもあります。