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変化する需要を分析し、チャンスを拡大-訪日シンポ

年間4000万人・8兆円時代に向け
改めて課題や展望を議論

パネルディスカッションの様子  日本政府観光局(JNTO)と日本経済新聞社がこのほど開催したシンポジウム「インバウンド4000万人時代を目指して~観光ビジネス大国へのロードマップ~」では、ナビタイムジャパン代表取締役社長兼CEOの大西啓介氏や、フランス観光開発機構在日代表のフレデリック・マゼンク氏らによるパネルディスカッション「訪日外客4000万人、インバウンド消費8兆円を目指して」がおこなわれた。各登壇者は、政府が掲げる2020年の目標達成に向けて取り組むべき課題や、企業のビジネスチャンスなどについて意見交換するとともに、訪日旅行の今後の展望についても議論した。

パネリスト
ナビタイムジャパン 代表取締役社長 兼 CEO 大西啓介氏
フランス観光開発機構 在日代表 フレデリック・マゼンク氏
三菱総合研究所 政策・経済研究センター研究員 劉瀟瀟氏

モデレーター
日本経済新聞社 編集局次長 下原口徹氏

中国人は「モノ消費」から「コト消費」へ
ニーズ多様化で地方も訪問

 パネルディスカッションの冒頭では、日本人と中国人の価値観や行動の分析をもとに両国におけるマーケティングについて研究している三菱総合研究所政策・経済研究センター研究員の劉瀟瀟氏が、近年の訪日中国人旅行者の動向について説明。16年の訪日外国人旅行者数の約2400万人のうち、中国人旅行者は26%にあたる約640万人を占めており、「15年ほどではないが、依然として高い伸びを示している」と語った。

 一方、消費額の動向については、昨年に中国政府が代理購入商品などへの税制規制を強化したことや、越境ECが普及したことなどにより「消費が減ったように見えるが、実際には代理購入の分が減っただけで、一般の旅行者の消費は減っていない」と指摘。加えて「『爆買い』に代表されるような買い物中心の旅行はもう古い。今は日本に来たらさまざまな体験を楽しんで、買い物は帰国後に越境ECで済ませるのがトレンドになりつつある」と述べた。

 劉氏は中国人のニーズの多様化について、リピーターの増加などにより「『よりディープな日本』や『日本でしかできないこと』に興味が移りつつある」と説明。今後の旅行消費額の増加に向けては、「花見などのイベントを『着物を着ること』や『お弁当を買って食べること』などの体験と結びつけると良い」と提案した。

 そのほかには、ニーズの多様化にともないゴールデンルート以外の地方を訪れる中国人が増加していることも説明。背景には近年、都市部の住人の間で農村部の生活を体験する「農家楽」の人気が高まっていることにあるとし、「日本の地方も空気が綺麗で自然があり、子供と一緒に楽しむことができる。農家楽のアップグレード版として理想の旅先なのでは」との考えを示した。


▽訂正案内(編集部 2017年3月8日14時40分)
1ページ目第1段落第1文に主催者として日本政府観光局(JNTO)を追記するとともに、タイトルを修正しました。お詫びして訂正いたします。