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LGBTインバウンド誘致セミナー、まずは理解を-市場規模は24.3兆円

 東京会場には、旅行業界関係者など約70名が参加した LGBT市場に特化したランドオペレーターのSKトラベルコンサルティングは、9月末に東京と京都の2会場で、「LGBTインバウンド誘致セミナー」を実施した。LGBTとは、L(レズビアン)、G(ゲイ)、B(バイセクシュアル)、T(トランスジェンダー)の頭字語で、セミナーではLGBTに関する基礎的な情報や、LGBTツーリズムの現状や課題について有識者が解説した。

 東京会場ではまず、同性結婚が可能な社会の実現のために広報や啓蒙活動をおこなうNPO法人「EMA日本」理事長の寺田和弘氏が登壇し、LGBTに関する基礎的な情報を説明。同氏は「人間の性はそもそも多様である」とし、「日本ではLGBTに反対する世論があり、対応が遅れている」と指摘した。その原因としては、LGBT当事者が偏見を恐れて隠しているために、人々がその存在を身近に感じていないことなどが考えられるという。

 一方で、電通ダイバーシティラボの調べによると日本の人口の7.6%がLGBTであるといい、実際にはLGBTが身近な存在であることを強調。その上でLGBT市場に取り組む際の注意点として、夫婦限定のサービスや施設などで設定される男性と女性の料金差などに対する不快感を例示し、「クライアントのセクシュアリティを理解することが重要だ」と語った。

左から、EMA日本理事長の寺田和弘氏、ホテルグランヴィア京都営業推進室長の池内志帆氏、IGLTA広報ディレクターのロアン・ハルデン氏、アウト・ジャパン取締役の小泉伸太郎氏 続いて、2013年から本格的にLGBTのマーケティングを開始しているホテルグランヴィア京都営業推進室長の池内志帆氏が登壇し、LGBTツーリズムの市場についてプレゼンテーションを実施。池内氏によると、LGBTは子供を持たない共働きカップルが多いため、可処分所得が高く旅行などの消費行動が活発で、その市場規模は世界全体で「少なめに見積もって2020億米ドル(約24兆3000億円)」という。取り組みを始める際には、LGBTを身近に感じ理解することが重要であるといい、まずは世界中で開催されているゲイパレードなどのイベントに参加してみることを勧めた。

 なお、LGBT市場の動向については寺田氏も、15年6月に全米で同性婚が認められたことで、今後3年間のうちにアメリカへのLGBTの旅行者が130万人増えるという調査結果を提示した。

 このほか、SKトラベルコンサルティング代表取締役社長の小泉伸太郎氏は、LGBT市場への広報手段として、同氏が取締役を務めるアウト・ジャパンが開設予定の訪日LGBT旅行者向け情報サイト「OUT JAPAN」を紹介。また、LGBTに向けた効果的な広報について「LGBT当事者のデザイナーを起用するなど、ターゲットを意識したデザインが必要だ」と訴えた。

 さらに、セミナーには1983年設立の国際ゲイ&レズビアン旅行業協会(IGLTA)広報ディレクターのロアン・ハルデン氏も参加。挨拶では、LGBTツーリズムの活性化にはLGBTの理解が不可欠であるなかで、こうしたセミナーの開催が第一歩になると歓迎した。

 なお、現在日本からIGLTAには6社の旅行会社と17社のホテルが加盟しているのみだが、ハルデン氏は、加盟によってLGBTをターゲットとした国際的なメディアとのコネクションを持てることなど多くのメリットがあるとアピールした。