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ASEAN、2国間の直行便未就航率2割超-「観光と航空」統合進捗に懸念も

  • 2014年12月22日

AATIP航空輸送専門家エキスパートのウォルフガング・サンダーフィッシャー氏  日本アセアンセンターは12月17日、都内で「2015年ASEAN経済共同体最新情報:観光と航空」と題したセミナーを開催し、ASEAN事務局担当者や有識者が、加盟10ヶ国の観光と航空を取り巻く現況について報告をおこなった。この中で、ASEAN航空輸送統合プロジェクト(AATIP)航空輸送専門家エキスパートのウォルフガング・サンダーフィッシャー氏は、ASEANが2015年にASEAN経済共同体(AEC)を設立し、「観光と航空の統合」をめざす一方で、加盟国のいずれか2国を結ぶ直行便については未だに2割以上が就航していないと説明した。

 「ASEAN単一航空市場(ASAM)最新事情」と題した講演でサンダーフィッシャー氏は、ASAM構築の進捗状況について説明。LCCの急増などにより域内のアクセス利便性が高まっていることや、「航空輸送に関する多国間合意(MAAS)」と「航空旅客輸送の完全自由化に向けた多国間合意(MAFLPAS)」の2つの自由化協定について、7ヶ国が両方に批准していることなどについて述べた。ただし、2国間を結ぶ直行便については、45の組み合わせのうち10が未就航となっており、各国の首都または最大の都市を結ぶ直行便も13路線が未就航であることも報告した。

 センター・フォー・アジア・パシフィック・アビエーション(CAPA)が今春に発表した資料によれば、ASEAN加盟国で他国との直行便未就航が多いのはブルネイ、ミャンマー、ラオスでいずれも4ヶ国と直行便が開設されていなかった。全ての国と直行便で結ばれていたのはシンガポール、タイ、マレーシアの3ヶ国のみ。首都または最大の都市の間ではヤンゴンが5都市と結ばれておらず、そのほかジャカルタ、プノンペン(カンボジア)、バンダルスリブガワン(ブルネイ)、ビエンチャン(ラオス)が4都市と結ばれていなかった。全ての首都または最大の都市と結ばれていたのは、シンガポール、バンコク、クアラルンプールの3都市のみだった。

 サンダーフィッシャー氏は、ミャンマーやラオスなど経済規模の小さい国やその首都だけでなく、ジャカルタのような大都市についても他の首都とのアクセスが限られていることを指摘。「AECにおいては都市同士がつながるニーズがある。航空会社にとっては大きな成長のチャンスが隠されている」とコメントした。ただしその後の質疑応答ではフロアから、ASEANが2015年のAEC設立に合わせてめざす「航空と観光の統合」の進捗に対して懐疑的な意見や、未就航路線の今後の開設の可能性について見通しを問う声が挙がった。

 これに対してサンダーフィッシャー氏は、加盟国全てが国際航空輸送の9つの自由のうち5つに関して協定を結んで「ハーフ・オープンスカイ」化を実現し、さらにMAASとMAFLPASの両方に批准すれば、「全ての路線を完全に活用できるチャンスが生まれる」と主張。あわせてヨーロッパにおける単一航空市場化の動きについて振り返った上で、「実現しそうでできなかった路線も協定の締結により開設された。ASEANでも2国間または首都間の未就航については大半を無くせる」と希望的観測を示した。

ASEAN事務局、ASEAN経済共同体局上席担当官のエディ・クリスメイディ・スーマウィラガ氏  一方、ASEAN事務局およびASEAN経済共同体局の上席担当官を務めるエディ・クリスメイディ・スーマウィラガ氏は、未就航の多さについては空港のキャパシティや航空会社のオペレーション能力、運航機材など様々な要素が関わっているとし、特に採算性の問題を強調。最終的には「市場が決め、航空会社が決めること」との見方を示した。