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新春トップインタビュー:日本観光振興協会会長 山口範雄氏

裾野の広い業界で連携を強化し
観光でもグローバル競争に勝つ

 2011年4月の日本観光協会と日本ツーリズム産業団体連合会の統合以来、日本最大の観光関連団体として、海外・国内・訪日を問わず観光産業の振興に努めている日本観光振興協会(日観振)。2013年6月から会長を務め、地方公共団体、各種観光協会、運輸・交通会社、旅行会社など多岐に渡る会員を取りまとめる味の素代表取締役会長の山口範雄氏に、現在の日本の観光産業を取り巻く課題や、2015年の活動方針などについて話を聞いた。

─2014年の日本の観光産業の動向や、貴会の活動について振り返ってください

山口範雄氏(以下、敬称略) 最大の出来事はやはり、日本旅行業協会(JATA)との共催で「ツーリズムEXPOジャパン」を初開催したことだ。世界の151ヶ国・地域と47都道府県すべてが出展し、目標を上回る約15万8000人が来場して大いに盛り上がった。さらに観光庁が主催する「VISIT JAPANトラベルマート」や「VISIT JAPAN MICEマート」も同時に開催され、「ジャパン・トラベル・ウィーク」として大々的に開催した。裾野が非常に広い観光産業において、官民が連携して海外・国内・訪日の三位一体に向けた活動を具体化したということで、非常に大きな意味があったと思う。

 2014年全体を振り返ると、国内旅行は消費税増税の影響が少々あったものの、女性やシニアが牽引力となり、一言で言えば堅調だった。2013年の富士山や和食に続き、2014年も富岡製糸場や和紙が世界遺産に指定され、明るい話題が多かった。その他にもLCCの増便や新規路線開設、横浜を中心としたクルーズの日本発着、三陸鉄道の運転再開、今春の北陸新幹線開通、国際的なホテルの進出などが注目を集め、堅調さを裏付けた。

 訪日旅行については年間の外国人旅行者数が1300万人を超え、素晴らしい伸びを見せている。中国や韓国については政治的な問題もあり、日本からの旅行者数は低迷しているが、両国からの旅行者数は急激に伸びている。台湾はさらに素晴らしく、2014年の旅行者数は韓国を追い抜くかしれない。また、即効性のあるビザ要件緩和措置を続けて実施したことで、ASEANからの旅行者数も急増している。新免税制度の導入もタイムリーだった。

─国内や訪日の好調を維持するために必要なことは何でしょうか

山口 観光産業にとって大事なポイントは「裾野が広い」ということだ。観光客が増えれば航空会社や旅行会社などに限らず、小売業や我々のような食品産業も需要が増す。そのことは、銀座4丁目の中国語があふれた光景などを見れば実感できると思う。

 従来のような名所を訪れるだけの観光ではなく、他産業と連携した農業ツーリズムや医療ツーリズム、産業観光など、新しい形の観光の萌芽が見え始めているのは良いことだと思う。特に農業ツーリズムについては、外国人が地方の果樹農家を訪れたり、日本人が道の駅を訪れたりして、農観連携が地方創生につながっているケースも見られる。地方創生は第3次安部内閣でも国策として推進しているが、その大きな部分を観光産業が担うことができればと考えている。