トップインタビュー:オーストラリア政観日本・韓国地区局長のライリー氏

 昨年5月、オーストラリア政府観光局(TA)日本・韓国地区局長にアンドリュー・ライリー氏が就任した。オーストラリアへの日本人旅行者数は2012年に6.4%増の35万4000人と前年を上回ったものの往時に比べれば低迷が続いており、航空座席、豪ドル高などの課題を指摘する声もある。しかしライリー氏は、今後3年間で50万人への回復は可能と意欲的。国としては良い印象を維持しながら旅行需要にはなかなか結びつかないジレンマもある中で、どのように復活をめざすのか。ライリー氏に聞いた。


-これまでのご経歴をお聞かせください

TA日本・韓国地区局長のアンドリュー・ライリー氏(以下、敬称略) 80年代にTAで10年間勤務していた経験をもつ。勤務地はすべてアジアで、シンガポールや香港、東京で働いたが、シンガポール、香港でも日本市場について責任を担っていた。TA以外を含めても、職歴のすべてでアジアに関わっており、そのうち15年間は日本に在住した。マーケティング、マーケットデベロップメント、新市場の開拓、そして業績の思わしくない分野を好転させる業務に携わる機会が多かった。

 今回の私の任務は日本市場と韓国市場の復活だ。オーストラリアのインバウンドは非常にうまくいっているが、日本と韓国は期待通りの成果をあげられていない。私自身、日本と韓国の市場に進出する初期の活動に携わった経験もあり、今回の任務に就いた理由の一つだと思っている。


-日本市場の現状をどのようにご覧になっていますか

ライリー 日本には潜在的な可能性がある。日本市場におけるオーストラリア旅行の歴史を振り返ると、長期で見れば60万人台で、長距離デスティネーションにおけるシェアは5%程度だった。これが現在は約半分、2.5%程度になっている。

 私としては以前の長期的なトレンドに戻せない理由があるとは思えない。もちろんいろいろな問題はあるが、私自身はそう信じている。低迷の原因を指摘する声はいろいろあるが、問題というのはいつでもあるものだ。

 私がオーストラリアへの旅行プロモーションを日本で開始した段階では、日本人訪問者数は5万人程度だった。それが離任するときには63万人にまで拡大した。その当時は、もっと難しい問題があったのにもかかわらずだ。問題をどのようにポジティブに変えていくかが重要だ。


-当時はどのような問題があったのでしょうか

ライリー 座席数についていえば、ほとんどないに等しい状態だった。日本航空(JL)とカンタス航空(QF)が週4便ずつ、しかも小さな機材しかなかった。そして、この供給量に対して教育関係、業務渡航の需要はあったため、航空運賃が高かった。最も安い運賃で20万円程度だった。

 また、オーストラリアへのイメージもほとんどなかった。マーケット調査では、いつも「大きな空っぽの国」という回答が寄せられた。オーストラリアで何ができるのかも知られておらず、南半球のものすごく遠い国で飛行機で22時間くらいかかる、というような印象も持たれていた。

 さらに、こうした状況で、日本の旅行会社もオーストラリアに可能性を感じていただけていなかった。オーストラリアの業界も日本市場をよく知らず、興味を持っていなかった。