インタビュー:スクートCEOのキャンベル・ウィルソン氏

日中豪が主要市場
日本は旅行会社重視の姿勢強調

 シンガポール航空(SQ)が子会社として設立した長距離専門のLCC、スクート(TZ)。今年6月に運航を開始し、10月29日には成田/台北/シンガポール線に就航している。TZの初代CEOを務めるのは前SQ日本支社長のキャンベル・ウィルソン氏だ。フルサービスキャリア(FSC)として高い評価を得ているSQと、LCCとしての成功をめざすTZ。日本市場でも国内外のLCCの参入が続き、FSCとの競争も予見される中、双方の立場を熟知しているウィルソン氏に、TZの事業モデルや日本市場での販売戦略などについて聞いた。

-まずSQによるTZ設立のねらいをお教えください

キャンベル・ウィルソン氏(以下、敬称略) シンガポールにLCCが飛び始めたのは2003年頃。それ以降、急激な成長を遂げており、8年ほどの間でチャンギ空港の利用者に占めるLCC利用者の割合は、ゼロから26%に拡大した。26%は1300万人に相当する。“ローコスト市場”は著しく拡大し、現在は巨大なものとなった。

 ただ、それらのほとんどの人々が、4時間以内の飛行距離でしか移動していない。エアバスA320型機やボーイングB737型機で運航される距離だ。そこでSQは、この市場が今後も成長する中で、人々は4時間以上のデスティネーションにも飛びたいと思うようになるはずだと考えた。

 そうであるとすれば、これらの人々に選ばれるのはどのような航空会社か。バジェットトラベラーがすんなりとフルサービスのプレミアムキャリアを選択するか。それとも、短距離路線で乗りなれたローコストタイプの航空会社か。これがTZの設立理由であり、これらの人々をターゲットにしている。

 SQから何かを奪うようなことは意図しない。SQは今後もプレミアムマーケットに焦点を当てて高い品質のサービスを続け、機材を増やして事業を拡張していく。我々はローコストのレジャー市場に注力する。


-TZにとってLCCのビジネスモデルとはどのようなものでしょうか

ウィルソン TZにとっては、「シンプル」であり「率直」であり、「選択の権利を与える」存在として考えている。「シンプル」という意味では、我々のウェブサイトは非常に簡潔で使いやすく、運賃に何が含まれていて何が含まれていないかが一目でわかる。「率直」については、お客様に対して「あなたが得るものはこれであり、我々の責任はこの範囲」というように、明確に分かりやすくお伝えする。

 また、「選択の権利」としては、人々は自分で必要なものを選択できる。単に航空座席だけ欲しいのであればそれも可能だし、片道だけ食事をつけることもできる。深夜便は足元の広い席、日中であれば狭い席ということも可能で、すべてをお客様に委ねている。

 もちろん、安全で信頼できる航空会社でなくてはならない。その点では、我々の機材はSQから購入したものであり、機材整備もSQと同じ会社によってなされる。SQの資金力も、お客様の信頼を勝ち得るのに強力な後ろ盾となる。また、定時出発率の実現には多大な努力を払っている。

 これに加えて、TZは「楽しい」ことも重視している。ローコストはサービスレベルが低く、魅力がないことを意味するのではなく、TZの機内空間を楽しんでいただきたい。例えばスタッフが笑顔でいることにコストはかからない。