itt TOKYO2024

インタビュー:ジェイティービー ブランド戦略推進部 部長 今泉弘幸氏

  • 2010年12月7日
次の100周年に向け「感動」と「喜び」をお客様に約束
社内外の取り組みでブランド価値向上をはかる


 ジェイティービー(JTB)は2012年3月の創立100周年に向け、ブランド価値を高める取り組みを進めている。その一環として10月1日の組織変更でブランド戦略推進部を新たに設置し、グループ全体の一体感を高めて社員の意識向上をはかっている。すでに業界、消費者への認知度の高さは言うまでもないレベルだが、創立100周年の節目にあたり、選ばれるJTBになるためどのようなブランディングをしていくのか、ブランド戦略推進部部長の今泉弘幸氏にその方針や戦略を聞いた。
                                   
                                   
−ブランド戦略推進部を立ち上げたねらいとその取り組みについてお聞かせ下さい
 
今泉弘幸氏(以下、敬称略) これまで、JTBブランドを知らない人はいないことに安住していたところがあり、顧客が抱くJTBのイメージについて考えてこなかった。しかし、悪いイメージはなくても、「使いたい」というような選んでいただけるイメージもなかった。ブランド戦略推進部では、2012年3月の創業100周年を迎えるにあたり、JTBのやっていることを内外にアピールし推進していく。外部に対してはお客様からの長年の愛顧に感謝の意を示し、内部へは新しい100年に向けてお客様に選ばれるように努力し続けるという一体感を持たせるねらいだ。そうすることでブランド価値向上をはかっていく。

 また、2006年に分社化以降、全体を俯瞰する部分がやや弱くなってきた。改めて100周年という節目を前に、JTBグループとしてグループの経営理念を見直す作業を進め、それをベースとして各社の経営理念や行動規範に統一感をもたせるよう取り組んでいる。経営理念については表現に手を加える程度の見直しだが、JTBグループがお客様に何を約束するかという部分を明確に打ち出す。具体的には、「お客様に感動を提供する」ことを新しい約束として、社員一人一人に認識、共有させる予定だ。この新しい経営理念は2011年4月から適用予定で、今は最終調整段階にある。

 さらに、弊社社長の田川の2010年の年頭所感に基づき、4月から各社で「ブランドアンバサダー」を選定している。ブランドアンバサダーは各社のブランドを構築するために社員と各社社長の意見をとりまとめていく役割。これにより今後の各社の方向性を決定するイメージだ。


−これまでのご経歴と、部長ご就任にあたってそのご経験をどのように活用されるお考えかお聞かせください

今泉 東北の営業所で20年間営業を中心とした業務をおこなっていたが、営業所の規模が小さかったため様々な業務を体験することができた。その頃はお客様に「よかったよ」といっていただく瞬間のために仕事をしていることを忘れてはいけない、と思いながら仕事をしていた。また、取り扱っている商品やサービスはお客様に楽しく、元気になっていただくものだから、それを扱っている我々社員がそのような楽しさを忘れないように仕事をしよう、と折に触れて部下や後輩にも話している。今回のブランド戦略に関しても、お客様に感動していただくために自分達も感動を感じなければ、というところが基本になっていると思う。

 それ以後は東京の本社で勤務し、特に分社化した時には大きな部分に関わることができた。分社化を決断するまでは社内で様々な議論があったが、JTBには他の会社に先立ってそこに踏み出していくチャレンジ精神があった、ということ。一人一人の社員が自信を持って良いと思う。また、過去の先輩達のチャレンジ精神があってこそ今がある、ということを次の100周年に伝えていきたい。

 また、2年間JAPANiCANという外国人客向けのウェブサイトの仕事もしていたが、外国人に日本の商材を売る場合、JTBブランドが全く通用せず、改めて国内でのJTBブランドの力を感じると同時に、一歩海外にでると意外と知られていないということがわかった。JTBブランドが通用しないという部分で仕事をしているという社員は意外と少ないので、そういった分野で仕事ができたのは良い経験だった。


−JTBにとってブランドの役割とはどのようなものでしょうか

今泉 JTBブランドは「お客様との信頼の絆」、つまりお客様の期待を絶対に裏切らないということだと思う。JTBが100年間、「JTBに頼んでおけば間違いがない」というお客様の信頼に対してきちんと応え、信頼を築き上げてきたということを改めて意識し、お客様との絆を強いものにしなければならない。そうすることでお客様にJTBを選んでいただけるようになることが重要だ。

 具体的に「絆」を強くする方法は、社内外それぞれに向けて考えている。外部に対してはJTBが旅行だけでなく、地域活性化の支援やオンライン事業などに取り組んでいることを広報を通じてアピールし、もっと身近でお手伝いできる場面があることを示したい。社内向けには社員の意識や、意識に基づいた行動を見直す。どんなに広告を打ったとしても実際に広告を見てお客様が店舗に出向いたとき、お客様の期待していたものが提供できなければお客様との絆を築けないからだ。

 扱っている商品や収益性を考えると、旅行会社は企業イメージの宣伝をできないことが多い。そのようななか、創業100周年を契機にJTBの企業イメージを宣伝していきたい。どの媒体を使うかはこれから決めるが、「継続」というキーワードのもとに地道な取り組みを続けてブランド価値を積み上げていく。効果はすぐには見えないが、そこで簡単に断念することのないよう社員を納得させる、それもグループ戦略推進室の大きな役割だろう。


−今後の具体的な取り組みについてお聞かせください

今泉 JTBブランドのコーポレートブランドと商品は、なかなか直接的に紐付けしづらいかもしれないが、100周年感謝記念の商品に加え、さらに次の100周年に向けたメッセージ性のある商品を各社に開発、提供してほしいと考えている。そのようなものをたくさん出すことによってブランド価値を高めたい。また、JTBのコーポレートブランドを徹底していくために、まずは日本国内で足固めをしてからグローバルな規模でのブランド戦略を考えていきたい。


−ありがとうございました