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インタビュー:茨城県企画部空港対策監 斎田陽介氏

  • 2010年8月4日
茨城空港は「滑り出し順調」、工夫こらし成田・羽田と差別化へ

 今年3月11日に開港した茨城空港は、路線誘致が思うように進まなかったことやスカイマーク(BC)の運休表明など、どちらかといえばネガティブな話題で耳目を集めがちだ。一方で、同空港は日本初の格安航空会社(LCC)対応型空港という特徴を持ち、東アジアでもLCCの展開が本格化すると予測されるなかで、戦略次第では台風の目になりえる可能性を秘めている。羽田空港の国際化や成田空港のLCC専用ターミナルの検討など変化する環境下で、茨城空港はどこへ進むのか。行政の立場から就航対策や需要開拓に取り組む、茨城県企画部空港対策監の斎田陽介氏に聞いた。(聞き手:本誌編集長 松本裕一)
               
               

−開港から約4ヶ月が経過しましたが、これまでの需要動向についてお教えください

斎田陽介氏(以下、敬称略) まず、アシアナ航空(OZ)のソウル線は、6月末で搭乗率が約7割。ただし、動きにばらつきがあり、3月は8割以上で非常に良かったが、5月は不調だった。5月は農繁期を迎えることも理由のひとつだろう。6月は持ち直し、7月は好調。7月は7割以上いくだろうと期待している。概して、出だしはまずまず。ほかに気になるところは、アウトとインの割合が7対3であるところ。もう少しインバウンドを増やしたい。

 インバウンドは、特に韓国で人気の高いゴルフの需要を見込んでいたが、まだ定着できていない。茨城には約130ヶ所のゴルフ場があり、しかもプレー代が安価なところから大洗のように有名なゴルフ場までバラエティに富んでおり、周辺の観光素材とあわせて活用していきたい。ゴルフ場側にも本腰を入れていただけるようになってきた。

 スカイマーク(BC)の神戸線は非常に好調。6月末で7割を超えており、日帰りできない朝の1便だけで7割を超える搭乗率は、驚異的な数字といわれている。茨城と関西圏との間に航空需要があるということを証明してくれた。


−春秋航空(9C)が7月28日から飛びはじめましたが、現在の路線誘致の進捗をお聞かせください

斎田 路線誘致は、国内線と国際線の両方に軸足を置いており、茨城空港に現在就航していただいている航空会社を大事にし、新規路線の展開をお願いすることを基本姿勢としている。国際線は、まずOZのソウル便のお客様を増やして釜山便の開設につなげていきたい。

 このほか、アジアのLCCを誘致することを基本的な方向性としている。例えば、エア・アジアX(D7)は羽田就航の話があるが、引き続き交渉中だ。また、フィリピンのLCCとも話をしているところだ。

 国内線はBCを軸にした新規路線の展開を期待している。BC社長の西久保慎一氏は先日の会見で、来年3月までに千歳便をデイリー、名古屋便をデイリーで飛ばすことを予定していると表明された。また、支店を設置していただく話もあった。


−BCについては、神戸線の運休が話題になりました

斎田 航空自衛隊百里基地の航空祭には1日で約8万人が来場されるため、BC便に乗り遅れる人が出てしまうことを心配した基地側と、定時で飛びたいBC側で、ボタンの掛け違いがあったのだと思う。

 航空祭当日は、基地側の大きな協力もあって1人の乗り遅れも発生せずに無事に終わった。結果的にはBCから3便を運航する計画が表明され、雨降って地固まるというか、我々としては非常に感謝している。今回のBCの神戸便再開も基地から大きなご配慮があったとのことで、基地側にも非常に感謝している。


−チャーター便の設定状況はいかがでしょうか

斎田 これまで片道ベースで44便設定されている。特にゴールデンウィークは片道22便で、グアムやセブ、海南島などリゾートへのチャーター便が多かった。また中国、台湾が多かったのも特徴だろう。搭乗率は非常に高く、平均で95%程度を確保した。客層は東京近辺の方々が多かった。(用機者となった)エイチ・アイ・エス(HIS)が、都心部からのバスを設定されたことも理由かもしれない。

 7月以降は、台湾からのインバウンドで茨城空港と静岡空港のオープンジョーが多いのが特徴。富士山、東京、茨城を周遊するコースで、静岡イン茨城アウト、茨城イン静岡アウトそれぞれ片道15便ずつの予定だ。こういった他都市、他空港とのオープンジョーは、今後のチャーター便誘致の有力な方向の一つと考えている。あとは、双方向チャーターで日本からは九寨溝や三峡、マカオなどを訪れる便も予定されている。

 今後もチャーター便は大事にしたい。成田や羽田がいっぱいになっても茨城空港は使える可能性がある点をアピールしていきたい。旅行商品を設定していただける旅行会社に対しては、広報費用とバス代について一定の支援措置も用意している。


−成田空港がLCC専用ターミナルの建設を検討していますが、どのようなご認識でしょうか

斎田 成田のLCCターミナルが実現すれば、茨城空港にとって何らかの影響が出ることは間違いない。ただし、コストの低減はハード面だけで決まるものではなく、例えばハンドリングコストや全体のオペレーションとの関係もあるが、それはまだ見えてきていない。

 また、施設を簡素化していかなければならないが、そのレベルをどうするのか。都会の利用者が、どの程度のチープさまで容認できるのか。これも注視していきたい。


−空港アクセスの改善についてはいかがでしょうか

斎田 北関東自動車道は来年のゴールデンウィークまでに全線開通する予定だ。また、常磐自動車道にはETC搭載車専用の「スマートインターチェンジ」を年度内に作る計画を立てている。岩間インターチェンジと千代田石岡インターチェンジの間に作ることで、空港へのアクセス利便性を向上したい。

 このほか東京から、茨城発着便の利用者であれば片道500円で利用可能なバスを1日3往復設定しており、徐々に浸透してきている。このバスは今後、9Cが定期便化するタイミングなども見つつ、さらなる整備を検討したい。


−今後の空港運営の見通しや戦略をお聞かせください

斎田 これまでのところ、まずは順調な滑り出しを見せていると考えている。現時点では就航路線は少ないが、航空会社を見ると、9Cを含めて勢いがあり成長が望める会社が来ているのではないかと思う。今後の路線展開には期待感を持っている。茨城空港には、民間空港としての機能と百里基地の首都防衛機能があり、今後も一定の制約、調整は出てくるはずだが、BCの一件でも自衛隊から民間航空機の運航には配慮するといっていただいた。今後はスムーズに調整が進めば良いと思う。

 また、茨城空港は首都圏にある空港であり、成田と羽田の影響圏のなかで生きていかざるを得ない。利便性は両空港の方が圧倒的に高い。そのなかで茨城空港が生き残っていくためには、やはり差別化が重要だ。差別化のための第一の方策が「ローコスト」であり、これは引き続き追求する。

 ローコスト空港であるためには工夫が必要。例えば、BCが実施しているように、客室乗務員がそのままカウンター業務をすることもコスト低減の工夫だ。また、整備士を飛行機でつれてきて、整備が終われば同じ飛行機で帰る試みもはじめている。このような工夫を、航空会社と一緒にしていきたい。

 さらに、知事もよく話しているが、将来的には国内線のLCCと国際線のLCCの連携ができないかと考えている。


−ありがとうございました