インタビュー:ジェットスター航空日本支社長 片岡優氏

  • 2009年12月9日
大切なのは消費者に選ばれること
旅行会社のツアーや手配、直販も選択肢の充実が重要


 ジェットスター航空(JQ)は11月1日、クイーンズランド州観光公社とゴールドコースト観光局とともに日本から70名規模のFAMツアーを実施した。2008年10月に関空発着、同年12月に成田発着で直行便を就航したゴールドコースト線は、送客数も順調に推移している。業界向けの大型研修旅行や優待料金の提供を続けており、旅行会社スタッフへの教育やサポートは欠かさない。FAMツアーに同行したJQ日本支社長の片岡優氏に、同社の戦略とマーケットの動向を聞いた。


▽関連記事
ジェットスター、関空線が好調、日本人旅客が15%増−以遠路線も強化へ(2009/11/04)


−ゴールドコースト線の現状を教えてください

片岡氏(以下、敬称略) 関空/ゴールドコースト線は新型インフルエンザの影響を受けた5月から8月までをのぞけば、2008年10月から2009年10月までで前年比15%増となった。日本人の出国者数が低迷する中で、路線として伸びているのはいいことだと思う。ゴールドコーストを訪れる日本人自体も増えており、日本航空(JL)のブリスベン線とJQのゴールドコースト線をあわせると、ゴールドコーストを目的地とする乗客は47%に高まった。今後はオークランドやメルボルン、シドニーなどゴールドコーストから先をどう伸ばすかが課題だ。


−今回のメガFAMのねらいは

片岡 一度でも体験し、現地に行ってもらうとイメージが変わり、JQのサービスの質も分かる。一般的にJQはローコストキャリア(LCC)ということで、機内食が出ないだけでなくサービスは何もないというイメージが持たれているようだが、実際は日本語メニューがあったり、各種サービスがある。販売スタッフが体感することで、彼らが接する消費者の不安感の払拭につながるはずだ。また、デスティネーションを決めずにカウンターを訪れる人が多い日本では、その場でセールスリードできるかどうかが大切だ。不安からくる質問に答えることが販売につながると思うので、そこをサポートしていきたいと思っている。

 現在の日本路線全体の販売状況は直接販売が38%で、旅行会社経由が62%と半数以上を占めている。ゴールドコースト線は直販率が45%だが、オンシーズンは旅行会社経由が多く、旅行会社へのプロモーションも重要だ。特に成田線はまだ新しいマーケットなので、販売する人たちの認知度をあげていかないといけない。現在、オーストラリアのプロモーションで年間約20億円を投じ、JQのイメージキャラクターのベッキーを用いた消費者向けの露出を増やしているが、それだけでは消費者には全部伝わらない。旅行会社と一緒に展開するプロモーションにもかなりの予算を投入しており、今回のメガFAMもその一環だ。さらに小規模のFAMツアーも2ヶ月に1回程度のペースで実施している。


−FAMツアー以外の店頭向けのアプローチはありますか

片岡 旅行会社の支店向けのセミナーを観光局と一緒に実施したり、デスティネーションセミナーが開催される場合は必ずサポートするようにしている。中でも一番有効なのは小さな単位の勉強会。ある支店の朝礼に出向いたり、団体販売を担当する営業マンが集まる会社ごとの勉強会など、個別にアプローチをかけて実施している。このほか、旅行業界向け優待料金などを設定している。過去には優待料金で600名程度集まったことがあり、業界のスタッフがこんなに足を運んでくれるのはとてもうれしいことだ。

 また、スタークラスの販売に力を入れたいと思っている。現在、東京、大阪でキャンペーンを実施しており、それぞれでアプローチの方法を変えている。大阪は消費者に、東京は旅行会社で販売するスタッフにインセンティブを提供するようにした。どちらが有効的なマーケティングになるか見ているところだ。もともとスタークラスの販売は大阪の方が売れていて、おそらく大阪はJQの就航期間が長く、告知期間が2年半たつので周知されはじめたということなのだろう。東京はまだ1年と数ヶ月。スタークラスがあること自体が知られていないので、認知度をあげていきたい。パッケージツアーでアップグレードする場合でも片道3万5000円の追加料金だから安いはずなのに売れていない。告知方法も含めて販売強化が課題だ。


−旅行会社経由の販売の動向を教えてください

片岡 グループが減っている。インセンティブ、職場旅行などで、特に今年の修学旅行は新型インフルエンザでかなりダメージを受けた。9月以降にも影響を引きずっていたのは修学旅行だけだ。航空会社だけでなく、旅行会社、ホテルなどにとってもリスクが高い。外的要因があると、出発間際に300名、400名がキャンセルになってしまう。それなのに取消料をもらうのは難しいという慣習がある。旅行会社もリスクのある商品だという意識でルールを作るなど慣習を変えていかないと、利幅が大きいはずの修学旅行が今後は一番リスキーな商売になってくるだろう。

 傾向としては、旅行会社経由でもFIT化が進んでいる。交通手段だけを旅行会社で買って、現地のホテルやオプショナルツアーを自己手配していく人が増えている。以前はパッケージ、グループ、FITのシェアは約30%ずつで均等だったが、今はFITが少し頭を出した格好だ。


−FITが増加すると、直販のシェアが増えていくとお考えですか。それをどうとらえていますか

片岡 日本就航当初の直販率は15%程度だったから、確かに直販が伸びている。ちなみにオーストラリア国内は国内線の80%、国際線は60%が直販。旅行会社経由は10%から15%程度で、実際に直販が主体となっているマーケットもある。日本の消費者も予約する機能や設備があれば、購入窓口は旅行会社でも航空会社でも、気にしないという人も増えてきた。だからといって、直販だけを増やしたいということはない。

 実際に旅行会社の商品は安心できるものがあり、需要と供給をバランスよく見ていかないと失敗すると思う。旅行会社経由は販売のチャネルが広がるし、何かあったときのサポートもしてもらえる。パッケージツアーならガイドもトランジットでのセンダーも全部ついていて、お金を出してでも安心を買いたいという需要もある。色んな人に多様な選択肢を提供することで全体の需要があがる。だからJQとしては、バランスをうまくとってやっていかないといけないと思う。

 団体旅行、パッケージツアー、FITなど、私たちは色んな選択肢を提供して最終的にJQでオーストラリアに行ってもらいたい。その流れの中で消費者にとって一番買いやすいものを提供する必要がある。そのために消費者向けのブランディングや旅行会社向けのFAMツアーなど、現在できるプロモーションをすべてしている。旅行会社向けにも直販も同じようにプロモーションしてきた結果、直販が増えてるのは現代のトレンドなのかなと思う。


−ありがとうございました


取材:秦野絵里香