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スペシャリスト・インタビュー:フォーラムジャパン 藤本英里さん

プロの添乗員として、ツアーの成功と全員笑顔の帰国を

 フォーラムジャパンは、サービス連合(サービス・ツーリズム産業労働組合連合会)が100%出資する旅行業界に特化した派遣会社。クライアントは600社以上の旅行会社、航空会社、ホテルなどで、登録スタッフは1500名前後に上ります。東京本社、名古屋支店、大阪支店にそれぞれ添乗派遣課とスタッフ派遣課があり、藤本さんは大阪支店に10年以上籍を置くベテラン添乗員の1人です。添乗員になりたくてなったという藤本さん。藤本流添乗技術や今の旅行業界についてお話をうかがいました。

フォーラムジャパン
ツアーコンダクター 藤本英里さん
2009年度(第5回)デスティネーション・スペシャリスト スペイン・ポルトガル認定
2009年度(第5回)デスティネーション・スペシャリスト ニュージーランド認定



Q.添乗員になったのはいつですか

 学生の頃から旅行業界に興味をもち、なかでも直接お客様と接することのできる添乗員に魅力を感じていました。一度は一般の企業に就職したものの諦めきれず、4年後に晴れて添乗員になりました。1泊2日の国内旅行からスタートし、それこそ世界中を飛び回る日々になりましたね。1990年代前半は、まさに海外旅行ブームの真っ只中。新人でも努力次第でどんどん海外へ出て行けるチャンスがありました。

 フォーラムジャパンに移ったのは1999年です。取扱い方面に多様性があり、仕事のボリュームも多いというのが理由で、いわばステップアップのためです。それから早10年が過ぎました。


Q.得意な方面などはありますか

 添乗員を長くやっていると、誰にでも得意な方面が出てきますが、あえて希望をいわずに仕事を受けるようにしています。アサイナー(添乗員を振り分ける担当者)の苦労もわかりますし、どの国に何度行っても新たな発見・出会いがあり、飽きることがないからです。何度も行っている場所で感激していたら、お客様に「初めてなの?」と聞かれたこともあるほどです。

 得意な方面イコール好きな国となりますが、大都市より自然派で、スイスやオーストリア、ノルウェーなどが好きですね。雄大な氷河、点在する湖、連なる山々など、スケールの大きなパノラマに毎回魅了されています。


Q.添乗員として大切にしているのはどんなことですか

 添乗員は確かにきつい仕事です。お客様のご要望やトラブルに対し、いついかなる時でも対応を余儀なくされますし、人によって物事の捉え方はさまざまですから。でも、添乗員の仕事はここまで、という線引きはしていません。ツアーの主役であるお客様に、安心かつ快適に過ごしていただけるよう、状況によってはポーターの仕事やガイドの仕事もこなします。何をしていても好きだから苦にならない、というのが正直なところでしょうか。常日頃からやって損なことは何もないと思っていますし、苦労して造り上げられたツアーを生かすも殺すも添乗員次第という側面もあるので、受けた仕事は必ず成功させて帰りたいという使命感をもって仕事をしています。

 また、お客様との接し方にしても、会社代表の添乗員とお客様という構図のままでは、事務的な対応になってしまいがちです。24時間行動をともにしていれば、お互いにいろいろな面が見えてくるので、両者の間にある壁を越えて信頼関係を築いていけたらすばらしいですね。そのために、不満なことがあれば旅行中に解決できるよう、何でも話していただけるような雰囲気づくりをしています。添乗員の行動や言動ひとつで、旅に対する印象が変わってしまうということも常に意識していますので、こうした雰囲気づくりは大切です。最後は全員笑顔でいい思い出のみを持って帰れるように、というのが理想です。


Q.DSを取得されたのはなぜですか

 添乗員の仕事は、時には中1日で次のツアーへ出かけて行くようなハードな場合もありますが、一方で個人の予定にあわせてスケジュールを組むことができるメリットもあります。DSはたまたま時間が空いた時に、自分の持っている知識の再確認のつもりで取り組みました。大好きなスイスやオーストリアがないので、自然や野生動物が魅力のニュージーランドと豊かな地域性と歴史が興味深いスペイン・ポルトガルにしました。

 ひとつの国についてさまざまな分野から問題が出ますので、知識としては豊かになりました。時にはガイドをすることもあるので、話題としては十分活用できます。今後は、単にDS取得者が増えていくだけでなく、資格そのものをもっと有効に活かせるよう、制度の充実に期待したいですね。


Q.この十数年でツアーの内容に変化は感じられますか

 パンフレットを見ると、人気の国の観光スポットは変わっていないので、今も昔も大きな変化は感じられないかもしれません。しかし、どんどん景気が悪くなり、昨年から加速した不況のあおりを受けて、状況は厳しくなっています。集客のために価格を落とさざるを得ない一方、お客様の商品を見る目は一段と厳しくなっていて、“安かろう悪かろう”では通用しません。

 一見これまでと同じツアーに見えても、どこかに必ず歪みが出ていて、それは現地ホテルやオペレーター、そして添乗員に響いてきているとひしひし感じます。旅行会社も航空会社もそれぞれに厳しいのだとは思いますが、業界をあげて改善に取り組まないと、いつか業界のシステムそのものが足元から壊れてしまうような事態になりかねないと危惧しています。形のない旅行において最も大切なことは、いかにお客様に満足していただけるか、ということを共通認識する必要があると思います。


Q.今後も添乗員を続けていかれますか

 はい。これだけさまざまなパッケージツアーが氾濫するなか、なぜ添乗員同行ツアーが選ばれ続けるのか、ということを感じながら、今後も旅の感動をサポートしていきたいと思っています。


ありがとうございました



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