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インタビュー:南アフリカ観光局最高マーケティング責任者のシン氏

  • 2009年10月20日
ワールドカップ前のメディア露出に期待、キャンペーンは旅行業界主体に
課題解決にも積極的に取り組む


 2010年のFIFAワールドカップ(W杯)は、南アフリカを宣伝する最大の機会となるビッグイベントだ。サッカー日本代表が予選を通過したことで、日本での南アフリカに対する関心度もさらに高まっている。このW杯を機に、南アフリカは観光プロモーションにますます力が入る。このほどW杯プロモーションのために来日した南アフリカ観光局最高マーケティング責任者ロシェーン・シン氏に話を聞いた。
               
                
               
                 
−今回の来日では日本旅行業協会(JATA)や、外務省とも会合をされましたね

ロシェーン・シン氏(以下、敬称略) われわれはジェイティービー国際部長の古澤徹氏を中心とするJATAの「南アフリカ旅行拡大ワーキンググループ」と常に連絡を取っています。同グループと連携することで、南アフリカの新たな観光素材を掘り起こし、商品化に向けた素材を拡充させているほか、共同でのマーケティング活動をしています。

 外務省でもアフリカへの観光客増加支援策、来年2月に南アフリカで開催されるG20の観光に関する会合について話しあい、われわれはスポーツツーリズムの強化を主張しました。


−JATAのワーキンググループ内でも課題となっていた空港でのロストバゲージの問題にどのように対処しますか

シン 南アフリカ空港(ACSA)と継続して話しあっています。ACSAは、監視カメラやスクリーニングシステムを導入、新たに警備員を配置するなど警備強化にあたっており、状況は徐々に改善していると信じています。この問題は大変重要だと考えており、空港会社のトップクラスとも協議し、話合いのための来日も視野に入れています。JATAのワーキンググループとも協力して改善に努めていますし、ハンドリング会社を多くの航空会社を顧客に持つスイスポートに変えたことで、状況は良い方向に向かっています。


−南アフリカは2010年に訪問者数1000万人、日本人3万5000人という目標を掲げています

シン この目標は変わりません。2010年に1000万人、日本人訪問者数も3万5000人に増やしたい。多くのサッカーファンがW杯に来ると思いますし、サッカーだけでなく、南アフリカには観光客をひきつけるたくさんの見どころがあります。ただし、日本からの座席数、特にビジネスクラス供給数が十分でないことは問題だと捉えています。全日空(NH)と南アフリカ航空(SA)が包括提携し、コードシェアする香港とヨハネスブルグ間のSAの座席数は、香港、中国、日本、韓国でシェアする形であり、日本への座席供給数が限られています。

 さらに知ってもらいたいのが、南アフリカでは建設工事のほとんどが完了しており、通常の観光ではサファリ、花、世界遺産など見どころはすべて訪問可能な状態であることです。W杯前後や開催中も観光することは可能です。


−2008年は日本からの訪問者数は2万7000人台と前年から13%減少しています。どのように目標を達成するのでしょうか

シン 旅行業界と共同でマーケティング活動を進め、もっと南アフリカの観光素材を知ってもらいたい。それによって、旅行会社で商品化が進められると思います。また、座席供給数の獲得に向けては、複数の航空会社に働きかけていきます。SAのほかキャセイパシフィック航空(CX)、エミレーツ航空(EK)、マレーシア航空(MH)、トルコ航空(TK)など南アフリカへの路線があるところは、ほとんどすべてと交渉しています。

 また、11月14日にダーバンで開催される日本と南アフリカの国際親善試合など、W杯前のメディアによる露出にも期待しており、日本代表のベースキャンプ地であるジョージのゴルフリゾート、ファンコートなどの視察も考えています。ジョージは風光明媚でゲームパークもあり、シーフードもおいしいエリアです。これらがW杯前に露出されることで、「食事がおいしい」「動物を見た」など南アフリカの体験や観光情報が伝わることが、2010年に訪問者をひきつけるきっかけになると考えています。

 
−日本マーケットをどのように見ていますか

シン 南アフリカが日本マーケットを重視していることは、観光大臣などの政府高官が来日していることでも示されています。雇用を生み出し、地域経済に貢献する観光業は南アフリカにとって非常に重要です。特に日本人はヨーロッパに比べて訪問者数が少ないものの、消費額が大きいため、とても重要なマーケットと捉えています。また、日本人は10月に集中する傾向があり、全体のピークシーズンの平準化にも貢献しています。ナマクワランドのようなワイルドフラワーが見られるところがとても人気がありますが、ワイルドフラワーは国中で見られます。南アフリカは気候が穏やかで厳しい夏や冬がないため1年中訪れることのできるデスティネーションです。

 ツアーパターンを増やすためにも、もっと南アフリカの観光素材を増やしたいと思っています。東ケープ州、ヨハネスブルグからアクセスしやすいノースウエスト州など定番コースから、ほかのエリアに広げたいと考えています。


−W杯以外の戦略はどのようなものでしょうか

シン 主にウェブサイトでの情報提供を通じたピーアールをしていきます。キャンペーン活動は旅行業界を主体に進めます。誰が南アフリカに興味を持っているか、旅行業界が熟知しているからです。消費者向けにもイベントを開催し、消費者と直接話す機会も設けています。消費者は南アフリカに対して不安を持っているのですが、それは知識や情報の不足からくるものです。

 ウェブサイトを通じて第一弾となるキャンペーンをはじめたところ、その反応は膨大でした。実際に訪れた人からの情報も掲載しており、このインフォメーションはW杯の前、開催中、その後でも有益なものになります。オンラインではよりパーソナルなアプローチができると考えています。W杯後は、消費者も業界もアクセスできるこのサイトをさらに向上させていきます。


−旅行業界へのメッセージをお願いします

シン 南アフリカツアーの商品化は利益が得られると断言します。ラグジュアリーな素材が揃うハイエンド向けのデスティネーションだからです。まずは観光局にコンタクトを取ることを奨励します。業界支援のために、月別に異なるテーマで各社とのプロモーションを考えており、販売用POPを提供するなどの支援を用意しています。まずは2年間協力関係にあった、ワーキンググループに参加していた会社からはじめますが、それ以外の旅行会社にも拡大していきたいと思っています。


ありがとうございました