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インタビュー:アマデウス・アジア・バイスプレジデントのスミス氏

  • 2009年9月16日
収益向上へ、旅行業界は時代の変化への対応が必要
厳しい時期だからこそ新ソリューション導入のチャンス


 アマデウス・アジア・ビジネスソリューショングループ・バイスプレジデントのピーター・スミス氏がこのほど、旅行業界との意見交換のために来日した。経済状況の悪化、新型インフルエンザの影響、ゼロコミッションなどで厳しい経営環境にある日本の旅行業界だが、「こういう状況だからこそ、利益を確保するためのソリューションが必要」とスミス氏は強調し、アマデウスの存在意義をアピールする。総合IT企業への進化の中で、さらに旅行業界との関係を深めているアマデウスの現状と戦略について話を聞いた。


−今回の来日の目的は

ピーター・スミス氏(以下、敬称略) 日本の旅行業界でどういったことが起きているのか、現在のトレンドを確認するために来日した。「パワー・ブレックファスト」と呼ぶミーティングを開き、アマデウスの取り組みを旅行会社に説明し、旅行会社の方からは日本市場の現状を聞いた。さまざまなフィードバックを得ることができ、有意義な意見交換になった。


−現在のアジア市場の動向をどう見ていますか

スミス 周知の通り、経済はマクロレベルで昨年からよくない状態が続いている。景気悪化の中で消費者は自信を失い、旅行を計画する場合もさらに慎重になっているようだ。新型インフルエンザは世界共通の問題で、日本でも非常に敏感になっていると聞いている。旅行業界にも影響を与えているのは確かだ。法人の業務渡航も厳しい状況と認識している。

 アジアの旅行需要は15%ほど落ち込んでいるが、幸いなことにアマデウスの下落率は業界全体の半分以下にとどまっている。新型インフルエンザの問題はやがて落ち着くだろう。経済状態については、底を打ち、今後回復に向かうのではないかと思う。しかし、過去の9.11やSARSの場合ほど回復は早くないかもしれない。アジアは輸出に頼る国が多い。カギはその輸出の回復具合だろう。

 アマデウスは世界でリーダー的なポジションを維持し、オンラインでも49%から55%のマーケットシェアを確保している。このような厳しい経済状況だからこそ、業界のコスト削減や収益性向上に貢献できるビジネスチャンスだと考えている。


−このような状況のもとで、将来に向けての戦略は

スミス 我々は3つの戦略の柱を持っている。まず、スポーツ選手のように無駄な贅肉を取り除き、筋肉質な経営体質にすること。2番目にカスタマーのニーズを的確に掴むこと。そして、適切な技術を導入すること。さらにいうと、旅行会社が本当に必要としているコンテンツを効率よく提供していき、ソリューションの運用効率を上げていく。そして、旅行会社が持っているリソースをコスト管理の観点からいかに効果的に活用できるようにしていくかが重要だ。

 アマデウスは、研究開発で年に3300人を維持するなど、研究開発への投資も積極的に行なっている。ITソリューションについていうと、まずオープンアーキテクチャーを採用。セールスからバックオフィスまで水平的にシームレスにサポートするシステムを開発している。生産性を向上させていくためのキーワードはインテグレーション、マルチ・チャンネル、そしてスマート・リテーリングだ。

 業界の最大の課題は、収益性をどのように改善していくかだ。時代は変化している。消費者の意識も市場の構造も変化している。業界はその変化に対応して、収益性を上げていかなければならない。そこで、我々はよりカスタマーに近いところでビジネスをしていくが重要だと考えている。例えばトヨタは世界的な企業だが、ベースとなる戦略は日本で行なう一方、販売する車は地域によって異なってくる。アマデウスも、まずはグローバルなトレンドを把握したうえで、地域の特性にあったソリューションを開発している。日本市場でもマーケットの特性を把握し、それを製品にフィードバックしたソリューションを提供している。今回のパワー・ブレックファストの開催も、そのフィードバックを得るための一環だ。

 アジア市場はこれからさらに成長していくだろう。アマデウスはグローバル企業だが、地域に根ざしたビジネスを展開していくために、さらに深くアジアにコミットしていくことが大切だと思う。


−パワー・ブレックファストで、旅行会社からどのようなフィードバックを得ましたか

スミス やはり、課題として収益性の維持・向上、LCCの登場やゼロコミッションなど市場変化への対応、優秀な人材確保などがあがった。これは世界共通の課題だ。人材については、日本は離職率が高いと聞いた。また、複雑な料金体系を簡素化することが重要だが、この点について日本はまだ進んでいない。

 今後もパワー・ブレックファストなどの意見交換を通じて、新しいアイデアを得て、それをシステムにどんどん取り入れていきたい。そして、さらに使いやすいシステムを生みだしていきたいと考えている。

 厳しい時期だからこそ、旅行会社は新しいシンプルなシステムを導入するチャンスだと思う。例えば、これまでは多くのデータベースを持つことが許されていたかもしれないが、今の時代はよりシンプルで、より効率のいい意志決定プロセスが必要とされているのは確かだ。独立したサイロのような縦割りの関係から、ひとつのデータベースですべてをカバーできるシナジー関係を構築していく必要がある。


−旅行業界の流通が変化しているなか、GDS企業から総合IT企業への進化を進めていますが、今後の旅行業界との関係は

スミス 今の時代、GDSだけでは十分ではない。しかし、この業界では流通は引き続き重要な機能であるのに変わりはない。国境を越えた流通で、業界のITプロバイダーとしてのアマデウスの役割は大きいはずだ。20年にわたって積み上げてきた実績をもとに、総合IT企業に進化していく。

 我々は航空会社向けに旅客/イールドマネージメント・システム「アルテア」という製品を提供しているし、最近では鉄道システムも取り入れはじめた。そうしたすべてのソリューションをサイロという縦割れではなく、シナジーに結びつけていくことが大切だ。時代の要請に応じて、我々も変化していく必要がある。今後も、カスタマーの利益が向上するようなITソリューションを提供すること心がけていきたい。


ありがとうございました