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インタビュー:フィンランド航空日本支社営業総支配人 サカリ・ロム氏

  • 2009年7月14日
欧州系航空会社ナンバー1めざす
「すべての旅行会社にとって良い航空会社でありたい」


 フィンランド航空(AY)の日本支社営業総支配人にサカリ・ロム氏がこのほど就任した。成田だけでなく関空、中部とフィンランドを結ぶAY。「日本にいちばん近いヨーロッパ」であるヘルシンキを経由する以遠路線も豊富で、地方からヨーロッパへの足としても重要な意味を持つ。新総支配人としてAYをどう舵取りするのか、ロム氏に聞いた。




−現在の日本市場を取り巻く環境をどうご認識されていますか

サカリ・ロム氏(以下 敬称略) AYにとっては、今年の春は好調で、夏もこれまでで最高といえる状況を期待していた。しかし、新型インフルエンザの影響は大きかった。日本市場が最も影響が大きく、ほかの市場ではここまでの落ち込みは見られていない。ただし、確たる根拠があるわけではないが、私は日本市場に対して良い感触を抱いている。現在は7月から9月の回復に全力を注いでおり、復調の兆しはある。旅行会社も、キャンセルした旅客を取り戻せるよう努力してくれているため、レジャー需要は早晩回復してくると考えている。

 一方、ビジネス需要の低迷は、世界的な課題だ。レジャー需要の落ち込みが日本での局地的な問題であるのに対し、ビジネス需要はフィンランド、ヨーロッパ、アメリカの市場でも減退しており、今のところビジネス需要に回復の兆しは見えていない。航空会社は、一般企業の出張の機会を作り出すことはできず、今あるシェアの奪いあいになる。我々としてはビジネス需要の回復が望めない今、レジャー需要の開拓を進めている。


−日本市場での戦略や目標についてお教えください

ロム 我々は、日本市場で非常に早いスピードで拡大してきた。1983年に運航を開始し、現在は成田への夏期チャーター便を含めて週18便にまでなった。日本に就航する欧州系航空会社の中では3位のポジションであるところを、ゆくゆくは1位にしたい。大変な挑戦ではあるが、最大の武器である路線ネットワークと運航頻度(フリークエンシー)を活用して前進したい。飛行時間もレジャー、ビジネスともに重要な要素だ。AYは主要な欧州の都市のうち32都市で日本からの最短の飛行時間を実現している。これはヘルシンキの地理的特長によるもので、我々の強みといえる。

 ネットワークと運航頻度を縮小することは競争から脱落することを意味する。日本に運航する路線について減便は考えておらず、むしろ将来的にはすべての日本路線をデイリー運航にしたいと考えている。例えば現在、成田便は週4便だが、来年3月には成田空港の発着枠が拡大しデイリー化できるようになる。成田便は、今夏もチャーター便を設定し週7便で運航する計画で、冬もチャーター便を運航したい。

 もちろん搭乗の前後、機内を問わずサービスレベルも重要で、高い水準に維持する必要もある。IATAによる調査では、欧州系航空会社の中では最高のサービスを提供する1社と評価されている。


−それらの目標に向けて課題はどのようなものがあるでしょうか

ロム 最大の課題は経済危機だろう。何とかダメージを最小にし、克服しなければならない。また中部、関空については、成田に比べれば欧州線の便数も少ないため競合は少ないものの、やはり難しい部分もある。我々は地元に密着して仕事を進める必要があり、それが2市場で良い結果を生むための唯一の方法だと考えている。

 もちろん増便も経済環境による。特に中部は自動車産業が大きな痛手を受けており、現在のところ週4便を運航しているが、それを週7便にするのは供給量として多すぎる。しかし、中部は昨年の冬スケジュールでは週3便であったが、今冬は少なくとも週4便にしたいと考えている。このように、少しずつ事を進めたい。

 インバウンドとアウトバウンドのバランスは現在のところ、成田は日本人が6割、欧州系が4割だ。中部は欧州系が多くても2割、関空は成田と中部の間といえる。本来的には日本とフィンランド、ヨーロッパそれぞれの市場で3等分になることが望ましいと思うものの、需要に応じて配分する必要がある。その意味では、中部線は日本での販売が非常に重要だ。


−日本の旅行会社との関係についてどうお考えでしょうか

ロム すべての旅行会社にとって、良い航空会社でありたいと考えている。大手だけでなく、小さな旅行会社のことも忘れない。プロダクトを最大限良くする努力を続け、運賃も売りやすいレベルに設定する。また、すべてのセグメント、すべての旅行需要に対応する。例えば、成田便がデイリー化すればビジネス需要を取り込むチャンスが増すため、我々もより力を注ぐことになるが、レジャー需要を軽視する考えはまったくない。法人向けに開始したオンラインサービス「フィンエアー・コーポレートプログラム(FCP)」は、航空券の予約・購入、利用履歴の照会、レポートなどの機能を提供するが、旅行会社経由で航空券を購入する法人にも利用可能にすることも視野に入れている。

 もともとAYは、どの市場でも旅行会社経由のシェアが80%を超える。もちろん直販を好む消費者もおり、日本でも昨年稼動したオンライン予約機能は予想を超える好調さだが、AYとしては直販を伸ばすことにのみ固執はしていない。フィンランドでもオンライン予約の割合は大きいものの、無理に押し上げようとはしておらず、旅行会社をサポートするため、自社のオンライン予約にもサービスチャージを設定している。


−ありがとうございました