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MICEインタビュー:KNT ECCカンパニー販売部長 稲田正彦氏

  • 2009年6月30日
MICE成功のキーワード(4)
顧客ニーズを十分に掴み、提案できる「引き出し」の数を増やす


 近畿日本ツーリスト(KNT)が社内組織を再編し、イベント・コンベンション・コングレス事業本部カンパニー(ECCカンパニー)を設立してから今年で6年目。MICEを含めた幅広い法人需要を対象に事業を展開している。同カンパニー販売部の販売部長である稲田正彦氏に、MICEに関する取り組みの状況を聞いた。
          
           


Q.業務で最も重点を置いていることは何ですか

 当社では2003年から「ソリューションビジネス」を旗印として掲げており、顧客のニーズをつかみ、提案につなげることがMICEの本質だと理解しています。そのために注力しているのが、顧客のニーズを「聴き出す」力をもつこと。「ヒアリング力」が営業パーソンには大事だと説いています。営業に行くと、話は聞けるかもしれない。しかしそのお客様の「ニーズがどこにあるか」をしっかり聞けているかが鍵となります。営業現場では、提案内容が根本的に間違っていないか、ヒアリングの重要性を常に心がけるようにしています。

 MICEビジネスを円滑に進める上で重要なのは、ヒアリングで顧客ニーズを把握すること、そして私たちの「引き出し=提案力・解決案」を増やすことです。顧客の目的にあわせて、数多い引き出しから最適なものを提案する。その引き出しをどれだけ持っているかによって、顧客からの信用を高めることができます。昨今、旅行会社に求められる提案能力はシビアになってきたといえるでしょう。しかし良い価値を提供すれば、その分ちゃんと利益となって返ってきます。信頼関係がますます重要になってきていますから、顧客の目的にあわせて解決案を提示し、我々のポジショニングを認めてもらうことが大切だと思います。


Q.「引き出し」を増やすために取り組んでいることはありますか

 具体的な方法としては、国内のイベント会社を中心に「MICEパートナーズ」を形成し、勉強会の開催を呼びかけています。旅行会社だけでなく、イベント運営会社やセミナー運営会社など、さまざまな視点からの意見が得られるので、非常に役立っています。

 たとえば、自分たちが過去に利用したことのないベニューや実施したことのないイベントなどの情報を交換することができますし、旅行会社とこれらパートナーの皆さんがタッグを組むことで、提案にも厚みが増してくるでしょう。これからもパートナーの位置づけを保ち、共存・共栄をはかっていきます。MICE業界は旅行会社だけで支えているわけではありませんから、もっと業界全体で関わっている方々と交流し、意見交換をしていくことも成長の一助になるのではないかと考えています。

 MICE市場では各国の政府観光局や現地サプライヤーが、気候の良さ、充実した施設、食事のおいしさなどについて、積極的なピーアールをしています。旅行会社の役割はそれらの情報を客観的に判断し、的確に捉えて顧客に伝えることでしょう。旅行の素材を集めて使いこなす力、それを「引き出し」と表現しています。


Q.現在用意している引き出しの特徴を教えてください 

 MICEパートナーズとの話しあいから出された試みに、社会貢献プログラムの提案があります。はじめたばかりでまだ成約には結びついていないものの、顧客からの感触は大変良い印象です。国内の企業研修の中ではチームビルディングのプログラムにも大きな反応がありますので、今後も企画を進めていくつもりです。

 また、インセンティブでは、ほかではできないことをどれだけ提供できるかがポイント。そこで取り組んでいるのが、ライツ(権利)ビジネスです。成功事例として、2010年に南アフリカで開催されるFIFAワールドカップの「ホスピタリティプログラム」販売権の獲得があげられます。当社は2014年までの販売権を所有するMATCHホスピタリティAG社と契約し、「FIFAコンフェデレーションズカップ2009」、ならびに「FIFAワールドカップ南アフリカ2010」における日本での独占公式代理店と、中国と韓国での公式代理店に指名されました。

 大人気のスポーツイベントを特別席で観戦できるため、トップ・クライアントやトップクラスの優秀な社員を対象としたインセンティブなどに最適です。毎年海外でインセンティブを実施している企業には、独創性のある企画、アイディアが求められますから、その際に引き出しの一つとして提案できるでしょう。提供できるのは、販売権利のある当社だけ。このようなライツを持ってアプローチすることは、MICEで有力な強みになると思います。


Q.新規顧客との接点について、今後の展望を聞かせてください

 お客様に対してMICEの開催条件を満たすデスティネーションを伝えるために、政府観光局とタイアップしたデスティネーションセミナーを続けていくつもりです。先日、弊社が主催し、オーストラリア政府観光局をはじめ関係機関の共催で実施した「オーストラリアンナイト」では、弊社のお客様を招待し、セミナーと有名シェフによるオーストラリア料理を提供して好評を得ました。今後は同様に、沖縄など国内バージョンでの開催も視野に入れています。

 海外で1000人以上の大型インセンティブを実施するような業界は、ある程度固定化していると考えられます。大型インセンティブは規模としてのインパクトは大きいものの、すでに取り扱う旅行会社と顧客との間に強い信頼関係が成り立っているケースが多く、料金面を含めた厳しい競合状況が続いています。今後はなじみの既存の業界だけでなく、新たな業界を取り込んでいくことが、MICE市場を拡大する手段なのではないでしょうか。


ありがとうございました


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