ベトナム戦争の痕跡に涙。平和の尊さを痛感
上:クチトンネルでは各種仕掛けを日本語ガイドが丁寧に解説 下:戦争証跡博物館では日本語の解説を読みながら涙する生徒が男女問わずいた |
ただ、クチトンネルの見学だけでは、ここで実際に戦争があったという実感が沸かないようだ。日本にはないジャングルの中で見る非日常の世界に、まるで映画のセットを見るかのような雰囲気となるのは無理もない。
しかし、翌日訪れた戦争証跡博物館では、生徒たちは一様に神妙な表情となった。ピューリッツァ賞を受賞した沢田教一氏の「安全への逃避」をはじめとした悲惨な戦禍や枯葉剤・化学兵器による後遺症の写真、奇形児のホルマリン標本などを目の当たりにし、絶句する。
向上高校の三谷幸久校長は「毎年、女子も男子も必ず泣く人がいる。映画やドラマでは戦争がかっこよく見えるが、本当は不幸なもので二度と繰返してはいけないと実感して欲しい」と言う。見学直後は無口になるほど衝撃を受けた生徒達。しかし最終日には「帰国後、見たことを他の人に教えようと思う」「世界のニュースに関心を持ちたい」「事実を知らなすぎた。もっと勉強しなくては」など、修学旅行で最も印象的だった事柄に挙げて、真摯に向き合おうとする感想が多かった。
「博物館の後にクチトンネルへ行けば見方が変わったかもしれない」という生徒もいたが、1日すべてが戦争の重いテーマでは修学旅行への意欲にも作用する。後日反芻できる効果を考慮すれば、今回の日程が良さそうに思える。
若い世代だからできる言語を超えた友情
学校交流は生徒たちの期待も高く、「最も楽しみにしている」と話す生徒が多かった。現地の学生にとっても同様で、校長先生や生徒代表の挨拶や代表生徒によるステージに対し、圧倒されるほど盛大な拍手や歓声を送ってくれる。シャイな日本の学生にどんどん話しかけてくるベトナム人学生の無垢な積極的さが、円滑な交流を生む秘訣なのかもしれない。
注目すべきは両校生徒が入り混じり、8人ほどのグループに別れてのベンタン市場〜ドンコイ通りを散策すること。「ベトナムの学生は英語が上手だけれど、私たちはなかなか話せない・・・」と四苦八苦する生徒も見られたが、一緒に買物をしているうちに打ち解け、手をつないで話し合う女子生徒の姿も見られるほどに。
修学旅行担当の武田先生は「こんな交流ができるのは若い世代ならではのこと。本当はお昼あたりから班別行動による密度の濃い交流時間を増やしたいけれど、外食の衛生は完全ではないし、交通や治安も安心できない面もある」と残念な表情を見せる。生徒からも「この後は夕食を一緒に食べるの?」「最終日のさよならパーティーで会える?」など、交流する時間を惜しむ声が多かった。