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ハワイ、質の高い商品造成に本気で取り組む時期
リゾート路線へ運航するジャルウエイズのリゾッチャ日本人の海外旅行が復活を遂げる中、ハワイへの日本人訪問者数も順 調に推移。8月については8ヶ月ぶりの減少となったが、これは想定の範囲内。だが、デスティネーションの競争が激化する中で、ハワイについては日本市場で安売りを続けてばかりいても、さらに減便という痛手を食らう可能性も否定はできない。旅行会社としては送客人員を伸ばすことと共に、質の高い商品を展開することに本気で取り組まなければならない時期は、今ではないだろうか。
高い客室稼働率から訪問者数が頭打ち

 ハワイ州産業経済開発局(DBEDT)によると、8 月の日本人訪問者数は前年比
1.4%減の14 万2945 人と8 ヶ月ぶりの減少を記録した。同月の日本発の航空座席供給量は1.0%増の18 万4468 席となっており、いわゆる「足」ではなく、ホテルの供給量が問題だ。

 日本の旅行会社が最も利用するオアフ島、しかもワイキキのホテルではリノベーションが進んでいる。これに加え、8 月はアメリカ本土からの大型コンベンションが3 件開催、約2 万人近くが訪問したことにより、日本市場へのホテルを確保できなかったことが、減少の大きな要因だ。ただ、減少についてハワイ州観光局(HTJ)は冷静で、当初から予測された程度との見方をしており、現在の動向は想定の範囲内で「引き続き日本市場は好調」という。

 ホスピタリティ・アドバイザーズLLC ハワイ・ホテル・フラッシュ・レポートの7 月までのデータによると、ハワイ州全体のホテル稼働率は1 月から7 月は昨年から3.2%ポイント増の82.3%で稼動。ホテルのタイプでも超高級(ラグジャリー)から格安(バジェット)まで、全カテゴリーが80%台で推移し、昨年と比較しても増加している。

 7 月単月で見ると、特にパッケージツアーなどで利用する高級(UPSCALE)ホテルの稼動率は昨年比3.6%ポイント増の90.9%を記録している。オアフ島全体のホテル稼働率は2.9%ポイント増の92.7%で、高級ホテルについては5.0%ポイント増の94.7%とほぼ満室の状況で推移しているの が現状だ。

 ただ、7 月の日本人訪問者数は前年比0.8%増の13 万941 人とかろうじて増加を示した。しかし、8 月はホテルの部屋を確保することが難しい状況に加えて、コンベンションで部屋がブロックされていたことから、需給バランスが日本市場については崩れ、航空座席が若干増加したものの、これに追いつく結果とはならなかった。

 HTJ はセミナーなどで、今年のホテル予約については、アメリカ本土からの需要が好調であることや、リノベーション、ホテルのコンドミニアム化など供給量との兼ね合いから、早期の予約を促していた。しかし、日本市場では一段と進む間際化とは必ずしも対応ができなかったというのが実情だろう。こうしたことを背景として、訪問者数は実質的な頭打ち状態となってしまった。

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航空会社の施策と旅行会社の対応

 日本航空、ジャルウエイズが運航する大阪/ホノルル線、および福岡/ホノルル線を運休は、東京/サイパン線、大阪/サイパン線の運休と共に旅行会社に衝撃を与えた。ただし、ハワイについてはJALグループで下期に50 本程度の不定期便で運航する計画があるものの、市場に与ない。

 これについて、HTJ ではハワイ・ツーリズム・オーソリティへの2006 年の年間マーケティングプランにおいて、日本航空のハワイ定期便運休による供給量への影響は12%減から13%減と推測しているが、福岡発のチャーター便、ノースウエスト航空の機材大型化で相殺可能な部分が相当程度という見解を示す。

 コンチネンタル航空も下期のハワイ方面行き正規割引運賃「フライライト」で札幌、仙台、福岡、長崎、鹿児島の5 都市発国内線を利用し、名古屋/ホノルル線に搭乗できるアドオンを設定。国内線との接続を売りにする中部国際空港を活用し、福岡だけでなく、日本航空が昨年に運休した札幌や仙台などの地方都市も視野に入れる。

 ただし、運休となった大阪、福岡市場は、共に独特の志向があり、特に関西圏については低価格でなければ消費者が食いつきにくいという話は一般的に知られている。航空会社としては利益率が低いまま、定期便運航を継続するほどの余裕は、燃油費の高騰する中でない、と考えた方が得策だろう。
 一方で、売るものを揃えなければ、販売はおぼつかないという意見もある。特に、海外旅行者数の拡大を目指す旅行業界、特に日本旅行業協会が掲げる2000 万人の施策は訪問者数の成長を期待しているものだ。

 JATA が掲げる右肩上がりに全て賛同するわけではない。ただし、潜在的な需要も獲得するためには、商品を造成するための座席を確保し、消費者へ提供することは互いのメリットとなるはず、である。現在の状況は、相互にメリットを得られる状況ではないということだろう。こと、ハワイに関しては未だに都会から地方まで根強い人気を持つことが各種の調査でも示されており、ここは牙城としたい。

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商品の方向性

 では具体的にどのような方向性を目指すのだろうか。市場の論理としては、需要と供給の関係が、最優先される。ホテルの供給は減り、航空座席数も減便による減少は避けられない。需要は高いものの、供給が減れば、価格は必然的に高くなる。ここに、最近の業界で話題になる高付加価値をつけた商品展開の可能性を見出せるだろう。

 一方、市場ではハワイ以外でも魅力的なデスティネーションが多い。これについてはハワイの優位性を見出すとすれば、様々な背景から、「安心・安全」を一つの切り札とできるだろう。例えば、現地の安定した情勢、アメリカとして享受する先進性などがある。これらの条件は目に見えないものであるが、販売現場で顧客の背中をひと押しする材料だ。

ハナウマ湾(写真提供:オアフ観光局) さらに、企画段階として検討すべき点は、ハワイのヘビー・リピーターにどのようなサービスが価値を感じてもらえるかが勝負だ。例えば、レンタカーなどは「超」の付くリピーターであれば、左ハンドルも苦にせず運転するが、そこまでは行かないが自由に歩きたい人は多い。こうした人たちを対象に、トロリーの乗り放題を実施する会社もあるが、リムジンを地域限定で乗り放題とする会社もある。こうしたサービスは、現地旅行会社によると、便利に利用できることから好評のようだ。

 また、ハワイらしさにこだわりを持つ商品も続々と登場する。これまでのツアーでは、サーフィンを地元消防士に習うというツアーも出ている。あるいはフラを組み込むツアーも人気の高い商品である。こうした人の輪(和)を拡げる発想に立つ商品の開発は必要不可欠な課題だ。

 こうした現状を踏まえると、旅行会社は自らの商品販売では岐路に立っている。HTJ、HTA など観光プロモーション側の計画も参考として、ハワイの商品企画、販売に取り組みたいところだ。

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ハワイ、来年のプロモーション計画

 HTJ は目標をとして第一に一日の一人当たり消費額の増加、第二に滞在日数の増加、第三に日本人訪問者数が減少する4 月と9 月の底上げ、の3 点を掲げている。 第一については、訪問者の右肩上がりが容易な状況では無いという認識の下、経済効果を高めるというハワイ州としての命題を意識したもの。このため、日数を増加することで必然的に、消費額の総体も増加する。そして、季節の平準化を図ることで人数の底上げも進めるというプランだ。

 マーケティングの方向も変わらない。「ディスカバー・アロハ」をキャッチフレーズに、ハワイ固有の文化、伝統、歴史を打ち出し、深みを伝えていく。地域的には関東圏を主軸として関西、名古屋圏で展開、さらに地方市場として札幌、仙台、広島、福岡を視野に入れる。

 具体的な展開としては、サイトを活用した情報提供を継続していくほか、これまで展開してきた各企業とのコラボレーションによるキャンペーン展開を図る。既にJCB カハワイ、来年のプロモーション計画ードについては、日本人のハワイ訪問者の25%程度のクレジットカード利用を期待し、キャンペーンを展開する計画だ。

 また、業界向けの対応としても、2005年度については全国16 都市でセミナー、ワークショップを開催しているが、引き続き行う。これを機会として最新の情報を提供するが、旅行会社の企画、販売担当者らが実際にハワイを訪問し、素材を確認し、体験することが重要という考えからFAMツアーも実施する。HTJ では旅行会社の若年層でハワイの訪問歴が無く、販売している担当者もいることを憂慮する。こうしたことを受け、断続的な取組みは不可欠との認識にあるようだ。

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ホノルル市長、業界関係者を前に関係強化

ホノルル市長筆頭とするミッション団 ハワイ・ホノルル市長のムフィ・ハネマン氏を筆頭にミッションが来日、ハワイ州観光局(HTJ)、オアフ観光局と共催で業界関係者を集め、「WOW Honolulu!」と題したレセプションを開催した。ハネマン氏はホノルルで今後、展開される新規事業により生まれ変わる姿を「WOW」に託し、ミッションの名称につけたと紹介、「これまで旅行業界が築いてきたホノルルとの協力関係に『マハロ(ありがとう)』と言いたい」と感謝の意を表すと共に、引き続き関係を強化していくことを求めた。

 また、ホノルルで進められている事業について5 つの点を重視していること表明。第1 にホノルル、ハワイは安全・安心な地を目指すことで、警察、消防、さらに海岸警備に至るまで一体となった取組みを強調する。第2 は引き続き、インフラへの投資を進めており、特に道路事情などは改善されているという。

 第3 にイベントを重視し、集客装置として機能することを期待。日本市場からホノルルマラソンに多くの参加があるが、これ以外にも3 月にはトライアスロンを実施しているほか、エコツアーやスポーツなどイベントは多彩。また、来年秋にはハワイで開催されていたプロ野球のリーグ戦「ウィンターリーグ」が復活するという。第4 に企業の投資活動が活発化しており、市の地域開発と協働で進めるアウトリガー、コオリナなど多くの企業を挙げ、官民一体となった環境は好材料と指摘する。さらに、これまでの「アロハ・スピリット」で、ハワイ、なかでもホノルルが日本からの訪問者を歓迎する姿勢を継続することを強調している。

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ホノルル市長、業界関係者を前に関係強化

 オアフ観光局はこのほど、東京で旅行会社を対象にウエディング・セミナーを開催、日本語対応のスタッフが多くきめ細かいサービスが提供できる利点と拡充するサービスを紹介した。オアフ観光局は、ウエディングをはじめとするロマンス・カテゴリーの訪問者は、現地での消費額が高く、積極的なプロモーションに取り組んでいるセグメントだ。

オアフ・ウエディング・セミナーの風景 セミナーでは、海外ウエディグ情報誌「ブライズ」編集長の花澤延枝氏が、読者アンケートで1000 通にのぼるハワイ・ウエディング検討者のアンケートを基に、ハワイ・ウエディングの現状や注目の集まるトピックを紹介。花澤氏によると同伴者数は、「7名から12 名」が35%と最も多く、次いで「未定」22%、「カップルだけ」14%、「1 名から6 名」13%、「13 名から18 名」10%、「19名以上」6%という結果。6 名以上の同伴者は合計で51%となり、数年前と比較して、着実に多数の同伴者と共に訪れる傾向を裏付けた。

 また、「オリジナリティあるウエディングにしたいという読者が多い」と最近の特徴を指摘。特に、同伴者と一緒にできるアクティビティや訪問先の情報だけでなく、パーティのメニュー、会場情報など、これまで以上に詳細な情報を求める読者が増えているという。

 オアフ観光局は同伴者が楽しめるよう散歩コース、アートギャラリー、豊富なイベントも紹介、現地のアクティビティとしてオアフ島滞在中に楽しんでもらうことを提案。結婚式では、尊敬や感謝を表す「レイ」を用い、カップルが親にプレゼントすることでオアフらしい挙式作りが出来るなどとアドバイス。このところの変化するニーズに対応し、訪問者が満足のいく滞在を提供することが鍵との考えから、ワークショップなどで旅行会社スタッフに島内の最新情報をはじめ、具体的な商品企画のためのアイディアを提供した。また、ウエディングドレスとアロハ・アタイアのファッションショーも開催し、現地のロコ・モデルが各社の新作ウエディングドレスや人気のあるドレスをはじめ、アロハシャツやムームーの現地有名ブランドのコレクションを紹介した。

ホテルも充実したウエディングプランを提供

ハワイで挙式を挙げたカップルと家族 各ホテルは、ウエディング向けのパッ ケージや特典なども、活況を見せる市場環境から力を入れている状況だ。ロイヤルハワイアンホテルは、近々にハワイの伝統的な式を行うプログラムを正式発表する。これは、ハワイ王朝時代に王のアドバイザーを司り、スピリチュアルな力をもつカフナという人物が、神父の代わりに結婚式を取り仕切る挙式。ハワイ語で祝福の言葉を述べ、ハイライトを迎える。また別のプランではホテル内のアバサ・ワイキキ・スパにおいて挙式前日、隣接するサロンを貸切り、女性だけでネイルを楽しむネイルパーティを開くことも出来る。

 ハレクラニはハネムーナーにスパークリングワインを提供。さらに、今年開始した「マイレ・アペア・パッケージ」は料金220 万円だが、ヴェラ・ワンスイートでの宿泊、ウエディングセレモニー、フォトセッション、ビデオ、スパ2 名分、ホテル内レストラン「ラ・メール」でのディナーを用意しており、充実した内容から今後の利用促進を狙う。

人気ドレスを身に付けるロコ・モデル ヒルトン・ハワイアン・ビレッジは来年2 月末、ベストブライダルが運営する全面ガラス張りの「オーシャン・クリスタル・チャペル」をオープン。施設は2 階建てで参列客80 名の収容が可能。また、ルネッサンス・イリカイ・ホテルは、客室と挙式、また挙式後のパーティを付けるウエディグ・パッケージを開発中。ハイアット・リージェンシー・ワイキキは9 月上旬に総工費16 億円をかけた客室1230 室のリノベーションが終了し、新しいホテルを売りとする考えだ。

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