トラベルビジョン 日刊トラベルビジョン
業務に生かそう法律豆知識!燃油サーチャージの取扱い
最近、旅行契約の取消に際し、燃油サーチャージの扱いでトラブルになることが多いようだ。日本旅行業協会への苦情・相談件数は一時、落ち着いたものの増えつつある。今回の本コーナーでは、この問題を整理し、現場での顧客対応に際して正しい知識を身につけておこう。
燃油サーチャージとは

 最近の原油、石油製品の高騰は異常である。そこで、国土交通省は、燃油価格が一定水準に戻るまでという明確な廃止条件の下に、航空会社に対して、通常の運賃に付加して「燃油サーチャージ(正式名称:燃油特別付加運賃)」を、航空旅客に対し一律に賦課することを認めた。

 この燃油サーチャージが本来の運賃の変更なのか、それとは別個の形式の運賃なのかは問題である。この点は、旅行業者にとっては、既に契約したパック旅行の代金とは別個に、旅行者に支払いを求められるか否かの問題となる。

 この点については幸いに、国土交通省より通達が出ている。それによれば、渡航手続き諸費用、空港施設使用料、超過手荷物料金などと並んで、「旅行料金に含まれないもの」とする通達が出ている。実務としては、この通達に従って、対処すれば良い。

 従って、燃油サーチャージを旅行代金とは別に徴収して問題はない。しかし、旅行者には『誤解』と『疑問』を残さないよう、なぜ徴収するか、よく説明して欲しい。お客との対応で苦慮している話を耳にするが、大事なのはきちっとした説明、つまり情報開示であり、それが不十分だと、苦情や無用なトラブルに発展しかねないので十分注意されたい。

このページのトップへ
燃油サーチャージは、取消し時に全額返還するものか

 燃油サーチャージを旅行代金とは別に徴収してしまうと、旅行契約の取消しにあたり、取消料を徴収できるときでも、その計算対象には「燃油サーチャージ」は含まれないことになるので、注意して欲しい。

 例えば、旅行代金の50%が取消料となるとき、その旅行代金には、計算対象の「旅行代金」(旅行契約約款別表第一を参照のこと)には、「燃油サーチャージ」は含まれない。この点は、渡航手続き諸費用等が含まれないと同じなのである。従って、取消料は、燃油サーチャージを含まない本来の「旅行代金」の50%となる。

 その結果このケースでは、取消しに当たっては、旅行代金の残りの50%とともに、燃油サーチャージを全額返還しなければならないのである。ところが、実際は、徴収するときには、旅行代金と別に、旅行者にはサーチャージを支払わせておきながら、契約取消しの時には、旅行代金の一部だとして、その全部又は一部を返さないというトラブルが絶えないので、旅行業者の方々は厳重に注意して欲しい。

このページのトップへ
燃油サーチャージの増加

 燃油サーチャージを旅行料金とは別に徴収した場合には、燃油サーチャージそのものが増額された時に、その増額分を請求できることに問題はない。もっとも、前述の通り、旅行者には、誤解の無いよう丁寧にその必要性を説明すべきなのは当然である。

 ところで、サーチャージを当初から旅行代金に組み込んでおくことも旅行業者の自由である。しかし、この場合、サーチャージが増加した場合に厄介な問題が生じる。

 旅行者が申込金を支払ってしまうと、旅行契約は有効に成立する。そうすると、「契約は守られるべし」との法原則が働き、原則として契約内容の変更は出来なくなる。そこで、旅行契約約款では「公示されている適用運賃料金に比べ、通常想定される程度を大幅に超えて増額される場合に限って、旅行代金を変更出来る」ことにしている(募集型、受注型いずれも契約約款14条1項)。

 すなわち、サーチャージの増額が、ここでいう「大幅」な増加といえる場合にかぎり、旅行代金を増額できるのである。となると、実務としては、「大幅」とはどのくらいかが重要となる。1,2割の増加では、「大幅」とはいえないが、5割を超えれば「大幅」であろう。2割から5割の間をどうするかであるが、この場合は、旅行代金全体との比較など、総合評価せざるを得ないと思われる。

 なお、仮に、「大幅」な増加を理由に旅行代金が変更できたとしても、旅行者は、それが不満であれば、取消料無く旅行契約を解除できる(募集型、受注型の契約約款16条2項2号)ことを忘れないで欲しい。

このページのトップへ
執筆 金子 博人 弁護士
[国際旅行法学会(IFTTA)会員、東京弁護士会所属]
事務所:東京都中央区銀座8-10-4和孝銀座八丁目ビル7F
TEL:03-3574-8535 FAX:03-3574-7144
eメール:mailto:kanelion@po.iijnet.or.jp
ホームページ:http://www.kaneko-law-office.jp
このページのトップへ