「MICEとは?」①
発展とチャンスにあふれた身近なビジネス 法人のマーケティング活動の重要な柱
MICEとは、(M)Meeting、(I)Incentive、(C)Convention、(E)Exhibitionの4つのビジネス・セグメントの頭文字をとった造語である。
MICEという言葉は、最近日本でもよく聞かれるようになってきた。我が国では“コンベンション”が歴史的に幅広く使われて来たので、コンベンション業界を統括して表現する言葉などとの説明もある。しかし、4つの違ったセグメントは同等に大切であると解釈したほうが、今後のそれぞれのビジネスの発展には必要だ。
さらに、大型の国際会議団体という解釈もあるが、少人数の企業会議でもミーティング、料飲、宿泊が伴えば、立派なMICEのグループであると考えたほうが、将来MICEビジネスの健全な発展を考える上では正しいだろう。
MICEは、身近なビジネス
MICEという言葉は、グローバルなホテル運営会社や、シンガポール、タイなどの国が、最近10年ほどの間に積極的に使い始めた言葉だ。韓国のハイラム大学のジェームス・コー教授によれば、MICEというビジネスの括りが文字として最初に登場したのは1994年のオーストラリアのことで、国の経済を発展させるエンジンとしての位置づけであった。
日本においては、この4つのグループをまとめて扱うと言う横断的な発想はなかったが、それぞれのビジネスに関しては戦後国の経済が発展するに応じ積極的に発達して来たと言って過言ではない。
まず、Mのミーティングでは新入社員研修や新商品の研修などがあげられる。Iのインセンティブでは大手家電メーカーが、独自の○○協力会などの特約店を集め、バスを何10台も貸切り、大型宿泊施設のある温泉地などで表彰などをしていた1960年代~70年代を思いおこす。Cのコンベンションは、国が1990年代から力をいれてきたので、多くの学術会議や国際大会が東京、京都、名古屋、大阪などの大都市で開催されてきた。Eのイベントは、工業化社会の発展に伴い、毎年千葉の幕張メッセで開催されている東京モーター・ショーなどの見本市があげられる。
このように、MICE全体としてのではなく個々のビジネスの塊を振り返ると、MICEが私達にとって、とても身近なビジネスであることが良く理解出来るだろう。
これから発展が期待できる「M」と「I」
MICEの4つのセグメント(ミーティング、インセンティブ、コンベンション、エキシビション)うち、諸外国と比べて、日本が発展と実績を上げてきたのは「C」のコンベンションと、「E」の展示会であった。
コンベンションは国の指導で進められて来た背景があり、展示会は工業国としての背景と国の指導あったのがその理由だと考えられる。 しかしながら、日本において「M」のミーティングと「I」のインセンティブは、これからの発展が期待できる分野だ。なぜなら、日本の国土の狭さや、単一民族という特殊な背景から、「MICE」ビジネスがもたらす“コミュニケーション力”が大きく必要とされてこなかったからだ。
これまで、「M」と「I」を主に主催しているのは主に法人組織であった。現代では、特にグローバル化が進み、官に依存しなくても独自に効果のあがるMICEをデザイン、運営していく力を大企業が着実につけつつあり、またMICEの専属チームを抱えている組織も増えている。企業・組織にとって現代の戦略上で大切な事は、顧客の期待を知り、その期待を常に越え、ビジネスを開発・獲得し、その結果として継続的に経済(数値)的目標を達成するかという事である。そういった視点でみると、MICEは組織のマーケティング活動の重要な柱であることがわかるだろう。
筆者:MPI Japan(Meeting Professionals International) 浅井新介 会長
プロフィール
東京生まれ。MICEビジネスのプランナーとして、イタリアへファッション・ビジネスの視察を実施、以後30年に渡り業界の経験を持つ。その後Westin Hotels 極東地区営業支配人、ユナイテッド航空代理店担当課長、法人営業部長、日本地区旅客営業部長を歴任しディストリビューションの整備にも貢献。スターウッドホテルズ日本の依頼により宮崎のシーガイア再生の為にセールスマーケッティングの責任者として赴任。海外、国内の数千名規模のMICE獲得とその受け入れに成功し、リゾート再生に貢献した。