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現地レポート:MSCクルーズ、ひと味違う欧州の船旅

  • 2016年5月31日

地中海最大手のMSCクルーズに体験乗船
欧州らしいスマートカジュアルな雰囲気でMICEの可能性も

今回のクルーズは満室。2000人超が乗船した  日本人に人気の3大クルーズ海域の一つ、地中海。その日本人旅行者の4割強を集客するのが、イタリア・ナポリ発祥の欧州最大手MSCクルーズだ。これまでアジアではシンガポールが最東の寄港地だったが、このほど客船「MSCリリカ」(6.5万トン、乗客定員最大2679名)でジェノバ/上海の41日間のクルーズを実施。その最終寄港地として、2016年4月29日に博多に寄港した。この日本初寄港の機会に博多から上海までの2泊のクルーズに乗船し、地中海の雰囲気が特徴というMSCクルーズを体験した。


カジュアルだけれど軽すぎない居心地の良さ

MSCリリカ。「ルネッサンス・プログラム」は同型船4隻で実施リニューアルの目玉は船の大きさを拡張したこと。人気のバルコニー客室約200室を増加  MSCリリカを見送る和太鼓の力強いパフォーマンスが終わると、それに応えるように船内にはオペラティック・ポップの名曲「タイム・トゥ・セイ・グッバイ」が鳴り響いた。博多港出航を知らせる汽笛替わりだ。離岸時に必ず音楽が流れるわけではないというが、イタリアを感じさせる重厚なメロディが日本の余韻を切り離し、地中海スタイルのMSCクルーズの船旅が始まるという期待が一気に高まっていく。

MSCリリカでは中国配船を意識し免税店も拡大。時計や化粧品などブランド店が充実 MSCリリカは、MSCクルーズが2003年に自社として初めて建造した客船。15年に一大リニューアル「ルネッサンス・プログラム」をおこなっており、船内は新造船のような明るさに満ちている。船の中心であるフロント周りのアトリウムはベージュの大理石のような質感で統一され、落ち着いた雰囲気。子供からシニアまで気軽に乗ることができる欧米の大手カジュアル船のなかでも、MSCクルーズはスタイリッシュさが印象的だ。

落ち着いた質感が印象的なフロントエリア  同船は2016年5月1日から1年間、中国のカイサ・ツーリスティック・グループがチャーターし、上海を起点に日本と韓国を巡るショートクルーズなどを実施。その間、日本で同船を販売する機会はなくなるが、今回の体験乗船ではMSCクルーズの特徴を知ることができた。

最後の寄港地・博多を見送る乗客たち 客船によってデザインが異なる部分はあるが、MSCクルーズ日本支社長のオリビエロ・モレリ氏は「スマートカジュアルのコンセプトや地中海スタイルの陽気な雰囲気、快適に過ごしてもらうためのホスピタリティはどの船も変わらない」と話す。滞在すれば、インテリアの質感や色使い、照明の明るさ、船内空間をさりげなく心地良くさせるオリジナルフレグランスなど、細やかな心配りに気付かされる。モレリ氏によると、こうしたこだわりを強く反映できるのは、MSCクルーズが他の大手クルーズ会社と異なり、一代で世界大手となった同族企業だからだという。

 今回の乗客はロングクルーズを楽しむ欧州からの乗船がほとんど。41日間の休暇を取れる年齢層が中心のため、1週間のクルーズに多い家族客よりも上の世代が多いようだ。ゆとりのある乗客たちが、航海中に親しくなった人とカフェやラウンジで会話を弾ませ、通路で出会えば立ち話に興じる。まるで船の中に、ヨーロッパの小さな町の穏やかな時間が流れているようだ。